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COLUMNSブログ「論語と算盤」

意志から生ずる身心

2024年1月23日

成富なりとみひょう(注・直茂、勝茂に仕え、武功とともに治水に名を残す)申され候は、「勝ちといふは、味方に勝つ事なり。味方に勝つといふは、我に勝つ事なり。我に勝つといふは、気を以て体に勝つ事なり。かねて味方数万の侍に、我に続く者なき様に、我が身心を仕なして置かねば、敵に勝つ事はならぬなり。」と。〔聞書第七〕

(成富兵庫殿がいわれたことである。

 勝利とは味方に勝つこと、味方に勝つとはわれに勝つことである。われに勝つというのは、おのれの意志によって事物を動かす(自分自身の気力によって主体的な条件を有利にかえていく)ことである。

 日ごろから、味方の数万の侍のなかに、われに続くほどの者はないというくらい、身心をきたえておかぬことには、敵に勝つことはできない、と。)

<出典:『葉隠』原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

 

戦いの場で大将が成すべきこと

 

 

先陣を切って

自らの力で敵を圧倒する

 

部下が前進できなくなったときに

自らが先頭に立ち局面を打開する

 

 

 

大将がそのような姿勢であってこそ、部下は心を奮い立たせます。

 

逆に、いつも後方にいて前面に出ず、ただ差配するだけというような大将なら、部下の意識と勇気は水を浴びせかけられたように消沈します。

 

 

 

組織や集団の成果は

その大将の力量次第

 

 

 

大将には極めて強い精神力が求められます。

 

その精神力・意志の力によってこそ、武技の力が高まります。

 

 

味方や部下から認められるには、精神力、思考力、洞察力、決断力、行動力、武力、勇気、全てにおいてその隊・組織のトップレベルでなくてはなりません。

 

いわゆる “ スーパーマン ” でなくては務まらないのです。

 

 

 

現代ではスポーツの世界の一部以外ほとんど見られません。

 

 

 

しかし

協調や協力によって

物事を成していくプロセスには

依存心あるいは他人事というような

自分主体でない思考が入り込んできます

 

 

 

戦国時代から20世紀まで、我が国には強いリーダーが存在し、次の時代を切り拓いてきました。

 

そこには、強力かつ強烈な精神力が見て取れます。

 

 

 

合意を得た上で、皆で一緒にというようなスピード感や重量感では、事は成し遂げられません。

 

 

 

 

21世紀の今日

我が国を始め先進国は

切り拓くべき次の時代が

見えていないのでしょうか

 

 

 

しかし

 いずれ間違いなく

  好むと好まざるにかかわらず

   時代の転換点がやってきます

 

 

 

そのとき

底力が残っていなくてはなりません

 

 

 

自らが主体であること

 

少なくとも

自分の人生は自分が律し

自らの意志にもとづいて

営むこと

 

 

 

 

本書には、“勇気”を勧める教訓談が追加されています。

 

― 大木前兵部(注・鍋島藩創業に参画した功臣)勇気勧めの事

 兵部組中参会の時、諸用済みてよりの話に、「若き衆は随分心掛け、勇気を御嗜み候へ。勇気は心さへ付くれば成る事にて候。刀を打折れば手にて仕合ひ、手を切落さるれば肩節にてほぐり倒し、肩切離さるれば、口にて、首の十や十五は、喰切り申すべく候。」と、毎度申され候由。(聞書第七)

 

(大木前兵部が会合の終りに話された。

 「若き者は勇気を心がけるように。勇気は心さえ固まれば手に入れられるものである。

刀が折れてしまったら手で戦うことができる、手を切り落とされたら肩でぶつかり相手を倒すことができる、肩を切り離されたら口がある。敵の十人や十五人の首を喰切ることさえできるのだ。」

ということをいつも語っていた <筆者の現代訳>