己れ才無くして而して能に譲らず。甚しきは則ち之を害す。己れ悪をなして而して人の善を為すを悪む。甚しきは則ち之を誣ふ。己れ貧賤にして人の富貴を悪む。甚しきは則ち之を傾く。此の三妒は人の大戮なり。〔人情〕
(自分が才能が無くて才能のあるものに譲らない。甚だしきはこれを害する。自分が悪いことをして人が善をなすのをにくむ。甚だしきはこれをそしる。自分が貧賤にして人の富貴をにくむ。甚だしきはこれをひっくり返す。この三つの妒 ― ねたみは人の大罪である。)
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
人の大罪とされる三つの妬み
これを逆から見てみましょう
自分に才能が不足するなら、その才能を有する者にその役割を担ってもらう。
そしてその者の行いがうまくゆくように助力する。
自らは悪いことを行わない。
そして善行を為す人を褒め称える。
自分より裕福な他者の存在を気にしない。
こんなところでしょうか。
こうしてみると、なんとなく物足りなく感じませんか。
人間臭さ、あるいは生命としての動きが感じられないというか・・・。
どう感じますか?
人、一人ひとりは尊厳ある唯一無二の存在です。
これを尊重することを忘れてはなりません。
妬みに毒されない考え方
一つは “ 憤 ”
自分の置かれた現状、周囲の環境に憤りを感じるのなら、自分の力を養っていくことです。
自らを生まれ変わらせんばかりに、強い思いとして信念を確立し邁進するのです。
そうではなく、自分はそのままで他人を妬むのなら、まさしく「愚」としか言いようがありません。
二つめは “ 大義 ”
どんな環境や条件であれ、いかに生きるかという自分の人生の大義に向き合い、その道を進むことです。
ここには、憤りの感情や自分を卑下するような必要はありません。
他者がどうであれ、己の道を進むことです。
三つめは “ 慈愛 ”
憤り、大義であるにせよ、世の中の弱者を救うこと、その道を進むのです。
ところで、うさぎはなぜかめに負けたのかご存じですか?
真打ち昇進の記者会見の場で、逆に憤りと絶望を感じた四代目 三遊亭圓歌氏(落語家)が、ジュポン化粧品本舗の故養田実社長から指南された話です。
“
「うさぎとかめの童話があるだろう。うさぎは、どうしてのろまなかめに負けたのか。言ってごらん」
「うさぎにはいつでも勝てると油断があったのです。人生は油断をしてはいけないという戒めです」
養田社長は「本当にそう思っていたのか。零点の答えだ」と語気を強めて、静かにこのように話したのです。
「かめにとって相手はうさぎでもライオンでも何でもよかったはずだ。
なぜならかめは一遍も相手を見ていないんだよ。かめは旗の立っている頂上、つまり人生の目標だけを見つめて歩き続けた。
一方のうさぎはどうだ、絶えずかめのことばかり気にして、大切な人生の目標をたった一度も考えることをしなかったんだよ。
君の人生目標は、〈他人の姿〉ではないはずだ。賢いかめになって歩き続けなさい」
”
<引用:『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』藤尾秀昭編 致知出版社
〔1月25日:うさぎはなぜかめに負けたのか〕より(〈 〉内は筆者改)>
人生は自分次第
これが本質
現代は他人と比べようとする傾向を特に強く感じます。
テレビ等のメディアやsnsなどが、ことさらに取り上げて関心を集めようとしており、その影響は相当に大きいもののようです。
自らを貶めるような考え方が溢れています。
溺れないようにしなくてはなりません。