恩を売ること勿れ。恩を売れば、卻って怨を惹く。誉を干むること勿れ。誉を干むれば、輒ち毀を招く。
(人に恩を売ってはいけない。下心を持って恩を売れば、かえって人の怨みを招くことになる。名誉を求めてはいけない。内容の伴わない名誉を求めても、すぐに人から叩かれるのがオチである。)
<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>
わかりやすい戒めです。
恩を売りつけられそうになること
名誉を欲しがる人を見かけること
いずれも嫌な感情が残るだけです
そういう人の心情を探ると、恩を売りつけることで何かの見返りを欲しがっていることは明らかです
しかし当の本人は、自分の卑しさが見透かされていることに気づいていないのか、無頓着です。
名誉を欲しがる人は、人から崇められたい、人の上に立ちたいという欲でしょう。
そしてまた、その本人は自分のさもしい内面が見抜かれていることを気にしていない様子です。
ただ、周りを見渡してみると
こんな人は
それほど多くないことが救いです
自分がそう成り下がらないように
気をつけていたいものです
類は友を呼ぶと言います
自分の心に隙があれば
そんな輩が近寄ってくるものです
近寄らせないためには
自分の内面を強くすることでしょう
人としてのあり方を
学び考え
実践していくことでしょう
~ 中に誠あれば外に形わる ~
(大学)
フランクリン(Benjamin Franklin 1706~1790 アメリカの政治家、科学者)は、ある人からお金を貸してほしいという手紙を受け取り、十ドル紙幣一枚と次のような手紙を返送したそうです。
“このお金はあげるのではなく、貸すのです。あなたはこれから郷里に帰れば、何かの仕事を見つけて、やがて十ドルを返すことができるようになるでしょう。そうなったとき、このお金を私に返してくださったつもりで、他の困っている正直な人に貸してあげてください。その人がまた返せるようになったときは、またそれと同じ境遇に遭っている人に、その借金を払うという条件で貸してください。それで私に対する負債は済んだものとお考え下さい。
こうして、このお金が先から先へとたくさんの人に渡って行くことを、わたしは切に望んでいます。これはわずかなお金で善いことをしようという私の考えなのです。
私はお金持ちではありません。ですから、このような方法で少しでもたくさんのお金を使いたいと思うのです。”
(注)
恩を売るのではなく
全く清い行為です
鉄鋼王と称されたカーネギー(Andrew Carnegie 1835~1919 アメリカの実業家)は、人心の掌握に長けていたそうです。
“他の鉄鋼会社との合併時、彼は必ず相手の会社の名前をつけた。どのようにすれば相手が気持ちよく働けるか。それを考えて自らの事業の発展につなげていったのである。”
(注)
名誉は人にあげ
社会のためになる道
その道を整えることです
最後にリンカーン(Abraham Lincoln 1809~1865 第16代アメリカ合衆国大統領)の逸話です。
“ある朝、リンカーンの秘書ジェームズは、ホワイトハウスの廊下の片隅でしきりに靴を磨いている男を見つけた。何気なく通り過ぎようとして、それが大統領リンカーンであることに気づき、あっと驚いて立ち止まった。ジェームズは「大統領のご身分でそのようなことをなさるのを人に見られるのは具合が悪うござます。」といったところ、リンカーンは人なつっこい微笑を浮かべながらいった。「ほう、靴磨きは恥ずかしいことなのかね、ジェームズ君。それは違っていると思うな。大統領も靴磨きも、同じく世のため人のために働くものだ。世の中に卑しい仕事というものはないはずだ。ただ、心の卑しい人はいるものだがね。」”
(注)
仕事には貴賤はない
ただし
人間には貴賤がある
(注)3ヶ所とも『人生を創る言葉』(渡部昇一著 致知出版社)より引用