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COLUMNSブログ「論語と算盤」

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2023年9月19日

三の御丸にて密通仕り候者御詮議の上、男女共に御殺しなされ候。其の後、幽霊夜毎御内に現れ申し候。御女中衆恐ろしがり、夜に入り候へば外へも出で申さず候。久しく斯様に候故、御前様(注:直茂の夫人)へ御知らせ仕り候に付て、御祈禱、施餓鬼など仰付つけられ候へども相止まず候故、直茂公へ仰上げられ候。公聞召され、「扨々さてさて嬉しき事かな、彼の者共は首を切り候ても事足らず、にくき者共にて候。然る処、死に候ても、行く所へも行かず、迷ひ廻り候て幽霊になり、苦を受け、浮かび申さゞるは嬉しき事なり。成程久しく幽霊になりて居り候へかし。」と仰せられ候。其の夜より幽霊出で申さゞる由。〔聞書第三〕

(三の丸で密通した男女をお取調べの上、二人とも死罪になさった。

 その後、夜な夜な御殿に幽霊があらわれた。お女中たちはこわがって、夜になると外にも出ようとしなかった。そんなことがつづいたため、直茂公の奥方に報告申し上げた結果、奥方が祈禱や供養をお命じになったが、いっこうにやまない。そこで直茂公へ言上したところ、公はいわれた。

「それは喜ばしいことだわい。あの二人は首を切るだけでは許せない、にくい者どもであったのだ。ところが、死んでも成仏できず、ふらふら迷って幽霊になり、なおも苦しみを受けて浮かばれないというのは、けっこうなことだ。できるだけ、いつまでも幽霊になっていればよい」

 その夜から幽霊は出なくなったという。)

<出典:「葉隠」原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

 

今日の言葉から何を学ぶか

 

 

一読すると、ありえない笑い話、凄まじい執念や残酷さ、単なる強がりなどとなりそうです。

 

しかしこの話には、考え方の広さ、さらに深さがあるのではないでしょうか。

 

 

 

多くの人は、幽霊を恐ろしく感じて耳を塞ぎたくなります。

また、信じていない人は鼻で笑っておしまいでしょう。

 

 

しかし、家来や部下が不安を感じる状況において、藩という組織の長としては彼らを安心させねばなりません。

 

幽霊の真偽は別として

 出るのなら出てみよ

  所詮何もできやしない

   逆に出ること自体が思うツボ

    私の処分の正しさが証明される

 

現実の世界と冥途の世界

 共に強く正しい藩主であると

  見せつける

 

 

 

人よりも広い見識、そして深い洞察無しに組織の長は務まりません。

 

そして、特に求められるのは “ 深さ ” です。

 

 

 

「現代人は広さを求めますが、人間が生きる上で必要なのは広さではなく深さです。」

 

(日本BE研究所所長 行徳哲男氏)

<出所:月刊誌『致知』2023年10月号

~創刊45周年 致知と私~>

 

 

 

多くの人は

知見を広げることに魅力を感じ

またそんな人に憧れがちです

 

しかし

 この世に大なる実績を残したのは

  紛れもなく一道を極めた人たちです。

 

 

 

才能と努力が伴った人は、その分野で大きな成功を収めます。

 

 

残る99.999・・・%である私たち凡人は

 何の実績を残せなくとも

  一道を深めて極めることで

   より有意義で味わいのある

    希望が持てる充実した人生に

     仕上げていくことができます

 

 

 

 

 近年、DX(Digital Transformation:デジタルによる変容)やAI(Artificial Intelligence:人工知能)というように、コンピューターが強大な力を持ってきています。

 

しかし、それは決して万能ではなく、人間が修正や手当をせねばなりません。

 

自然の営みや芸術のように五感で感じられるものではなく、脳の片方、論理的思考面だけに訴えて対処を求めてくるだけの道具です。

 

 

 

そんな日々を暮らすようになる人は

 

果たしてどこに向かうのでしょう

 

 

いかに生きるか

丁寧に

美しく

自然に

 

 

-人間を学ぶ-

 

人間学の方向であると考えます。