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COLUMNSブログ「論語と算盤」

無から生

2023年8月25日

道之みちこれしょうじ、とく之をやしない、もの之をかたちづくり、いきおい之をす。ここもっ萬物道ばんぶつみちとうとんで徳をたっとばざるし。道の尊き、徳の貴き、れ之を命ずることくして、常におのずからしかり。ゆえに道之を生じ、之を畜い、之を長じ、之を育み、之を成し、之を熟せしめ、之を養い、之をおおう。生じてたず、してたのまず、ちょうとしてさいたらず。れを玄徳げんとくう。

(道、言い換えれば自然とか無とか、そういうものが万物を発生させる。そのときは、まだ生まれたものは形を成していない。

 徳、すなわち道の働きが、それを養い、物としてこれに形をつける。物として血や肉をつける。

 物と物との相対関係、勢いというものが、それを成熟させる。

 だからして、万物は自分が生まれてきたもとである道を尊び、自分の体をつくってくれる徳、道の働き、そういうものを貴ばないではいられない。

 道の尊さ、それから徳の貴さ、これはだれがそうさせるというのでなくて、常に自然にそうなる。

 だから、道があらゆるものを発生させ、道の働きがこれを畜い、これを成長させ、これを育て、これを完成させ、それからこれを成熟させ、これを養い、これを鳥が卵を抱くように大切に保護してやる。

 造物主は、このようにして万物を生みながら、その生まれたものを自分の所有物とはしない。あらゆる仕事をしながら、自分の手柄を誇らない。あらゆるものの長でありながら、主宰者づらをしない。

 こういうのを目に見えない、もっとも微妙な徳というのである。)

<出典:「老子講義録 本田濟講述」読老會編 致知出版社>

 

 

 

 

有は無からしか生まれない

 

 

多くの人は何がしかのことを企てます。

 

善もあれば悪もあり、意義のあるもの、無いものもあるのでしょう。

 

しかし大概、芽が出ず終わりをみます。

 

それは、手垢のついた“有”から、さらなる“有”を生み出そう、育てようとする行いだからでしょう。

 

 

 

それらの働きは

徳、道によって成されるべきこと

人が口を挟むことではない

 

 

 

 

 では、この世を良くするにはどうすれば良いのでしょうか。

 

『言志四録』に、過去に取り上げましたが、次の言があります。

 

たいじょうは天を師とし、

の次は人を師とし、

其の次はけいを師とす。

 

〔言志録二〕

 

(最上の人物は天(宇宙の真理)を師とし、第二級の人物は聖人や賢人を師とし、第三級の人物は聖賢の書を師として学ぶ。)

<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>

 

 

 

天の命に従って為すこと

 

これが良くしていくコツ

 

私心があってはうまくゆかない

 

 

 

 天保七年(一八三六)からすやま(今の栃木県那須郡烏山町)円応えんおう和尚が村の衰廃を嘆き、二宮金次郎翁の元へ出向いて陳情したとき、翁は次のように追い返しました。

 

「世の中のことは、おのおのの職分があって相奪わぬようにできている。~中略~お前さんは自分が勤め行うべき事柄を怠っておいて、この凶年に当り、国君の道を私して飢民を救おうという考えを起こし、力が足りないで私にその道を求めようとまでする。これは仏道ではなくして、お前さんの我意を立て、名を釣り、誉を求める形である。その志は不善から出たものではないけれども、その行いは大いに道を失っている。お前さんが本当に民の飢渇を嘆くならば、どうして領主に進言してこれを救わせないのか。進言しても国君が愚かで救うことができなければ、これまた天命でいたし方がない。~中略~自分の任務でないことをたくらみながら、仏の本意にかなうと言っている。そんなことで、どうして仏の道を知っていると言えるか。」

<出典:「報徳記」富田高慶 原著 佐々井典比古 訳注 致知出版社>

 

 

 

天が創った仕組み

 

それをきちんと活かし

天の命を形にしてゆく

 

それが肝心

 

 

 

 最後に、言志四録からもう一つ。

 

 

およそ事をすには、

すべからく天につかうるの心有るを要すべし、

人に示すの念有るを要せず。

 

〔言志録三〕

 

(すべて事業を行うには、必ず天の意志に従う心を持つべきである、他人に誇示する気持ちがあってはいけない。)

<出典:同前述>