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COLUMNSブログ「論語と算盤」

お先にどうぞ

2021年6月11日

我はまさに人の長処ちょうしょるべし。人の短処を視ることなかれ。短処を視れば、すなわち我は彼にまさり、我においえき無し。長処を視れば、則ち彼は我に勝り、我に於て益有り。

(人を視るときは長所を視るようにして、短所は視るべきではない。

 短所を視ると、自分は相手より勝っていると思い、努力しなくなるから、自分の得にならない。

 長所を視れば、相手が自分より勝っていると思い、それに近づくように努力するから、

 自分に有益である。)

<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>

 

 

感情を持つわれわれ人間は、基本的にはネガティブ感情が先に立つそうです。

 

 例えば、脅威・恐怖・危険は避けるべきものであり、新しい試みなどもってのほか、安定的で安全な今の場所に留まるべきというのが基本になるようです。

 

 この理由は、種として生き永らえるために必要なもの、つまりは遺伝子レベルに書き込まれた自然な行動とされています。現状維持が大切であり、危ない橋を渡るような行動には否定的・消極的になるわけです。

  

 しかし、人類の進化の場面では、大胆な飛躍があったはずです。古くは危険な航海で新大陸をめざしたり、現代でも宇宙に挑戦したり・・・、いわゆる「火中の栗を拾う」行動がブレークスルーを生み出してきています。

 

 

 今日の言葉は、人の短所を見て、安心感や満足感を得るようなことではダメだといっています。

ただし多くの場合、そのような感情に取り付かれてしまいがちです。自分のことはさておき、他者の欠点が目に付くというのは誰しも身に覚えがあるでしょう。

 

 さらに、それを正当化する論理も準備万端です。例えば、本人の成長のためには、自身の短所をしっかり自覚させることが必要だと。

 

 なぜこうなるのでしょうか? 恐らく、その方が自分を変えなくて済むからでしょう。

他者の長所に影響を受けて、自分の現状を壊すことに危険を感じていることの証しです。

 

 

 コロナ禍で「自粛警察」という言葉が出ました。皆で一緒に自粛すべきという道理は間違いではないでしょうが、それをこらえられない人々の弱さ(短所)をあげつらったところで何も変えられません。

 

 

「人の長所を学び、自らの修練に活かす」ことが大事です。

 

まずは、オーソライズされた長所として、「他者に譲る」ことを積極的に実践してみます。

実は最近、自ら気になっていた点で、自戒していたところです。

 

 

具体的には、お店や電車などの入口・出口で、「お先にどうぞ」を実践しようと思います。