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COLUMNSブログ「論語と算盤」

とびこむ

2022年6月21日

大雨のいましめふ事あり。途中にてにわか雨にあひて、濡れじとて道を急ぎ走り、軒下などを通りても、濡るゝ事はかわらざるなり。初より思ひはまりて濡るゝ時、心に苦しみなく濡るゝ事は同じ。これよろづにわたる心得なり。〔聞書第一 教訓〕

( “大雨の教え” という心得がある。外出途中でにわか雨にあい、濡れまいとして道を急ぎ走り、軒下などを通って見たところで、濡れることに変わりはない。最初から濡れるものと心にきめてかかれば、濡れても心は平静でいられる。この心得は万事に共通のものである。)

<出典:「葉隠」原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

今回も〔聞書第一 教訓〕からです。

 

 

出典の解説には、

「避けよう、逃げようと思うからこそ不安や動揺が生ずる。

  避けられないものなら、

    いっそのこと覚悟して飛び込んでしまえというこの考えは、

      虚無的ですらあるが、これほど強いものはない」とのこと。

 

 

また、「常に最悪の事態を予想して、それに動じない心を決めておく。

あきらめではなく、もっと積極的な烈しい考え方」とも。

 

 

 

良くない状況に直面したとき

少しでも被害を少なくしようとしてあれこれと手を打とうとします。

 

そうでなく

  はなからその状況を丸呑みしようと覚悟を決めた方が

    結果的に上手くゆくというのも真理と感じます。

 

 

慌てふためいて対処しても

  何らかのダメージは生じるわけで

    覚悟を決めたなすがままの状態とそう大差ないでしょう。

 

 

事が終わった後に

  やれやれという気持ちで修繕を行うことと

    さあ再出発だと立ち上がるのでは

      根本的に活力が違ってきます。

 

 

直面する状況に対して

  マイナスを何とか減らそうとそれなりに対処したら

    上手くゆけば少々のマイナスで済むかもしれません。

 

仮に事前がプラスであったなら、そこからの減少は少ないでしょう。

 

 

 

逆に覚悟を決めて、真正面からマイナスを浴びたらどうなるか。

 

浴びたマイナスと事前のプラスの差は明らかに大きくなります。

 

ただし経験は広がりますし、知見も増えるでしょう。

 

“大学”の八条目の入り口、「格物致知」の一助となります。

 

 

 

 

マイナスを小さくしたいという気持ちは常に生じます。

 

しかし、そんな思想に染まってしまえば、

人間の度量が小さく、うんと小さくなり、

せっかく与えられた生も小っちゃいスケールでしかなくなります。

 

そういう人が増えてくると

家族、組織、国自体さえ小さくなり

右往左往する小人ばかりになりかねません。

 

 

 

私は還暦にはまだ少々時間がありますが

  人物を見てきた中では

    あれこれ考えず、素のままで

      新たな局面に飛び込む人が大成しているように感じます。

 

 

逆にあれこれ考える人は

  確かに堅実さはありますが

    どういうわけか何かでつまずいてしまう

      そんな場面を見てきました。

 

 

 

常に最悪の事態を予想して

それに動じない心を決めておくこと

 

その上で

素の自分のまま

“とびこむ”

 

捨て切ることができれば

必ず力が湧出する

 

全力を尽くし

あとは神仏に任せるだけ