果断は義より来る者有り、智より来る者あり、勇より来る者有り。義と智を并せて来る者有り、上なり。徒勇のみなるは殆し。 〔晩録 一五九条〕
(物事を素早く決断し実行するという態度は、正義感から来ることもあり、智慧から来ることもあり、勇気から来ることもある。正義感と智慧を合わせて来ることもあるが、これは最上の果断である。
ただ血気にはやる勇気だけから来る果断は危ういものである。)
<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>
決断と行動においては、思い切った熱い感情が必要なのかと感じますが、
それだけでは危ういとされます。
映画や小説などでは、主人公の熱い思いを中心に展開し、最後はハッピーエンドに収まるものですから、ついそういうものかと思いがちです。
また、日常生活の中で決断を下すという場面自体が少ないため、
そんなものかと真に受けてしまうわけです。
ただ、よく考えてみると、確かに血気に逸る勇気のみでは、
決断後の行動が長続きしないだろうと思い直します。
例えば、ヤマト運輸で「宅急便」を生み出した小倉昌男氏(1924~2005)ですが、宅急便事業のアイデアに対する社内幹部の反応は、当初全員が反対だったそうです。
社長が実父なので、意志を貫き通すことができた点はあるかもしれませんが、実現のためには当時の運輸省(現国土交通省)や郵政省(現日本郵政グループ)を相手にして、規制の壁を打ち破ることが必要でした。
普通に考えると、社内の反対は押し切れたとしても、勝ち目が少ない行政相手のケンカに一人で立ち向かって戦い続けるというのは、血気だけでは続けられないはずです。
そこには、生活者の便益を高めるという信念、つまり“世のため人のため”に通じる「正義感」があったのでしょう。
さらには利益を生み出す手法、例えば集荷から配達までを効率的に運営し得る「知恵」もあったに違いありません。
自分の体験からしても、グローバルには他国からの中傷に憤りを感じたり、ローカルには電車内のエチケットやマナーの悪さに腹を立てたりと、負の感情が沸き起こることは日常茶飯事です。
その一方、そこから何らかの行動を起こしているかと言われると、全くできていません。
そして次の日も、同様な感情が生じてくるわけです。
頭の中は堂々巡り・・・、何の役にも立たない情けない思考回路です・・・。
今日の言に当てはめて、こんな自分の思考を分析すると、
勇気に似たような「血気」と、良悪判別の付かない「正義感」という
二要因が存在しているような気がします。
何が違っていて、何が足りないのか・・・。
どうやら、「知恵」が無いようです。
効果を出せる「知恵」があれば、きっと行動に移すでしょう。
まずは、「知恵」が欠かせません。
そしてもう一つ。
それは私利私欲のない思い、世に役立つという“良好”な「正義感」が不可欠でしょう。
この二要因があれば、きっと行動に移せます。
忘れないよう、手帳に書き留めておくこととしましょう。
京セラ、第二電電(現KDDI)創業者であられる
稲盛和夫氏の有名な言も、改めて心に留めておきます。
「動機善なりや。私心なかりしか」