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COLUMNSブログ「論語と算盤」

営業キャッシュフロー(ⅱ)

2021年6月28日

営業CFの続きです。

 

 

今回は、未払費用引当金減価償却費がキャッシュにどう影響を与えるかを確認します。

 

 

 前回から継続の第四として、まず未払費用を確認しましょう。

 

 未払費用とは、毎期継続的に発生する費用であり、決算時点において未払いとなっている金額です。

電気水道代などのように、例えば月末で締めて翌月15日や末日などに支払う類の費用です。

これに対して、オフィスのテナント費用などは前払いというケースが多く、未払ではなく前払費用として計上されることになります。

 

 さて今回も、便宜上、以下の設定をします。

  ・前回提示したPLの「他経費」は、全て未払費用が発生するものとします。

  ・年間の「他経費360は、毎月30ずつ発生したものとします。

  ・前期末3月(X-13月)発生した「他経費」は40であったとします。

 

 この期の期首月である4月末日に支払う必要があるのは、前月発生した「他費用40となります。

その後、5月から期末のX3月までは、毎月30の支払となります。

そして期末月の3月には未払費用の残高として30が残ります。

 

 以上から、この期における「他経費」としての出金額は、360ではなく、3704030×11ヵ月〕となります。

 よって、この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益から10を控除して考えねばなりません

 

 

 第五に引当金です。

引当金には貸倒引当金賞与引当金退職給付引当金製品保証引当金、工事補償引当金、債務保証損失引当金など、色々とあります。

 

 企業会計では、引当金の適正な計上が求められていますが、税法上では中小企業などの貸倒引当金を除き、損金不算入となります。

 そのため、非上場企業のPLBSには引当金の勘定がほとんど現れません。

一方、上場企業等大企業では、投資家に正しい期間損益を明示する必要があるため頻繁に現れます。

 

 引当金の処理は、PL上でその引当金を損失計上し、期間損益を減少させ、その引当金を負債の部に計上(貸倒引当金は資産の部にマイナス表記)することになります。

 

 ただし、引き当てているだけで、会社からキャッシュが出ていったわけではありません

よって、営業CFにおいては、引当金が発生すればその金額を、引当金が増額となればその増額分税引前当期純利益に「足し戻す」という計算を行います。

 

逆に、当該の引当金の額が減少する場合には、PL上で利益計上することになるため、その減少分税引前当期純利益から「控除する」計算になります。

 

 

 さて、営業CFでここまで述べてきた内容は、間接法において「当期-前期」で算出されるものです。

具体的には、前回の売掛金棚卸資産では、「当期末残高-前期末残高」が正の値(当期>前期)なら、その値だけキャッシュ・マイナスの勘定となり、税引前当期純利益から控除します。

 反対に、上記が負の値ならキャッシュ・プラスとなり、その値を税引前当期純利益に加算します。

 

 次に、買掛金やその他の負債(未払費用未払諸税などで借入金は除く)の場合は逆になります。

これは、貸借対照表では左右が逆になる状態です。簿記の表現では、借方が貸方になるわけです。

 よって、「当期末残高-前期末残高」が正の値(当期>前期)ならキャッシュ・プラスとして税引前当期純利益にその値を加算、負の値ならキャッシュ・マイナスで減算するわけです。

 先ほど解説した引当金の処理も上記のとおりです。 前回の分も含め、ぜひ確認してみてください。

 

 

 では第6、減価償却費の効果を確認しましょう。

 減価償却とは、資産の取得原価(=購入費用)について、使用する期間に応じて、費用を適正に案分するための手法です。

 

 例えば、車両を200万円で購入した場合、4年間使えるのなら4で割って50万円ずつ4期に分けて費用計上するわけです(定額法の場合)。使用年数は耐用年数と呼ばれ、資産ごとに税務署が定めています。

 

 この減価償却費について、キャッシュの出入りという観点からは次のようになります。

  ・購入した初年度に200万円が出ていきます

  ・14年目は、50万円ずつPLに減価償却費として費用計上(原価や販管費)します。

   ただし、その50万円は会社から出ていっていません

 

 よって、キャッシュフロー計算書では、

・初年度に出る200万円を「投資活動によるキャッシュフロー」でキャッシュ・マイナス

減価償却による毎期の50万円を「営業活動によるキャッシュフロー」でキャッシュ・プラス

 以上を記載することになります。

 

 前述の引当金に似た処理であり、減価償却費として50万円が減算された税引前当期純利益に対して、実際はその50万円は会社から出ていっていないので、「足し戻す」わけです。

 繰り返しますが、取得時に払った200万円については、投資CFにおいて、初年度に一括してキャッシュ・マイナスの処理をします。これはこれで、おしまいです。

 

以上から、サンプルの損益状態を確認します。

 

 

 前回は、税引前当期純利益70に対して、売掛金の増加(当期-前期)、つまり未入金分でマイナス10棚卸資産の増加(当期-前期)でマイナス120買掛金の減少(当期-前期)、つまり未払分でプラス20、以上110がマイナスされ、マイナス40という状態でした。

 

 今回、未払費用マイナス10、引当金は無いものとして、減価償却費プラス50

以上をまとめると、結果的に当期生み出した営業CFは±ゼロとなります。

 

 

以上で、営業CFは終了です。

 

 

上場企業の有価証券報告書を見ると、前回と今回で述べた勘定以外に

たくさんの科目が記載されています。

ただし、基本的には解説した考え方で対処できるものです。

 

 

それでは次回は、「投資活動によるキャッシュフロー(投資CF)」について

見ていきましょう。