営業CFを詳しく見てみましょう。
先回言ったように、この営業CFをどれだけプラス化できるかが、
キャッシュフロー創出のカギとなります。
営業CFの詳細を確認するにあたって、下図のような損益状態をサンプルとして考えます。
具体的に言うと、X期(X-1年4/1~X年3/31)の損益状態として、売上高1,200、売上原価720、差し引き粗利益480、販管費総額410(うち減価償却費50、その他諸経費360)、営業外収益・費用ともにゼロ、特別損益ゼロ、税引前当期純利益70、法人税等20、当期純利益50であったとします。
さて、この期に生み出したキャッシュはどうなるでしょうか?
最終利益である当期純利益50がキャッシュ創出額となるでしょうか?
営業CFを考えるにあたっては、まず税引前当期純利益に着目します。
税引き後の当期純利益は、その期に残った最終的な利益であるため、これこそが生み出したキャッシュではないかと考えるわけですが、そうはなりません。
なぜなら、貸借対照表の流動負債のコラムで説明したように、X年3/31の段階ではまだ法人税等は支払っていないからです。
そのため、この期で生み出したキャッシュは、税引前の当期純利益を基準に考えることになります。
つまり70となりますが、これが本当にキャッシュとして増えたかというと、さらに検証が必要です。
今回は、売掛金、棚卸資産、買掛金に着目して、
仮のキャッシュ創出額である税引前当期純利益70がどう変化するかを確認します。
第一に、売掛金の状況を探ります。ここでは、便宜上、以下の内容を設定します。
・この会社は、顧客から「月末締め&翌月末入金」で代金を回収しているものとします。
・年間売上高1,200については、毎月100ずつの売上であったとします。
・前期末3月(X-1年3月)の売上高は90であったとします。
以上から、この期の期首月であるX-1年4月末日には、前月の売掛金90が入金されます。
その後、5月から期末のX年3月までは、毎月末に100が入金されます。
そして期末月の3月には売掛金残高として100が未入金として残ることになります。
つまり、この期における売掛金の入金額は1,200ではなくて、1,190となります。
(4月入金90+残り11か月の入金1,100=1,190)
当期生み出したキャッシュを税引前当期純利益70と認識するのは、あくまで売上高1,200の全額が入金されたという前提です。ところが実態は1,190であることから、
この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益から10を控除して考えねばなりません。
第二に、棚卸資産、つまり在庫に着目します。
年間の売上原価は720ですので、ひと月あたり60が計上されます。
このとき、仕入分がキッチリ過不足なく売れるということは非現実的です。
欠品による失注を避けるために、恐らく余分に仕入れる分が生じるでしょう。
仮に毎月70ずつ仕入れたと考えると、毎月10ずつ在庫となり、1年間で120の在庫増加になります。
冒頭に述べた様に、当期生み出したキャッシュを税引前当期純利益70と認識するのは、PL上に出現する入出金の加減算のみで考えているからです。
しかし、上述のように余分な仕入が発生して在庫が増えているのなら、その分も仕入先に支払う必要があり、出金額に加算する必要があります。
よって、この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益から120を控除して考えねばなりません。
第三に、買掛金を確認します。売掛金と同様に、以下の内容を設定します。
・仕入によって生じる買掛金は、「月末締め&翌月末支払」で代金を支払うこととします。
・毎月の仕入額は、前述のように毎月70ずつ、年間で840です(売上原価720+在庫増加分120)。
・前期末3月の(X-1年3月)仕入高は50であったこととします。
この期の期首月である4月末日に支払う必要があるのは、前月仕入分の50となります。
その後、5月から期末のX年3月までは、毎月70の支払となります。
そして期末月の3月には買掛金残高として70が未払いとして残ります。
以上から、この期における買掛金としての出金額は、上述した原価分の720と在庫増加分の120を加えた840ではなく、820〔50+70×11ヵ月〕となります。
よって、この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益に20を加算して考えねばなりません。
ここまでの検証で、X期のキャッシュ創出額は、当初想定した税引前当期純利益70に対して、
売掛金の未入金分でマイナス10、棚卸資産の増加分でマイナス120、買掛金の未払分でプラス20、
以上、110をマイナスして考えねばならず、マイナス40という状態になっています。
ただし、営業CFはまだ終わりません。
続きは次回とします。