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COLUMNSブログ「論語と算盤」

営業キャッシュフロー(ⅰ)

2021年6月24日

営業CFを詳しく見てみましょう。

 

先回言ったように、この営業CFをどれだけプラス化できるかが、

キャッシュフロー創出のカギとなります。

 

 

営業CFの詳細を確認するにあたって、下図のような損益状態をサンプルとして考えます。

 

 

具体的に言うと、X期(X-14/1X3/31)の損益状態として、売上高1,200売上原価720、差し引き粗利益480販管費総額410(うち減価償却費50、その他諸経費360)、営業外収益・費用ともにゼロ、特別損益ゼロ、税引前当期純利益70法人税等20当期純利益50であったとします。

 

さて、この期に生み出したキャッシュはどうなるでしょうか?

最終利益である当期純利益50がキャッシュ創出額となるでしょうか?

 

 営業CF考えるにあたっては、まず税引前当期純利益に着目します。

税引き後の当期純利益は、その期に残った最終的な利益であるため、これこそが生み出したキャッシュではないかと考えるわけですが、そうはなりません。

 

なぜなら、貸借対照表の流動負債のコラムで説明したように、X3/31の段階ではまだ法人税等は支払っていないからです。

そのため、この期で生み出したキャッシュは、税引前の当期純利益を基準に考えることになります。

つまり70となりますが、これが本当にキャッシュとして増えたかというと、さらに検証が必要です。

 

 

 今回は、売掛金棚卸資産買掛金に着目して、

仮のキャッシュ創出額である税引前当期純利益70がどう変化するかを確認します。

 

 

 第一に、売掛金の状況を探ります。ここでは、便宜上、以下の内容を設定します。

  ・この会社は、顧客から「月末締め&翌月末入金」で代金を回収しているものとします。

  ・年間売上高1,200については、毎月100ずつの売上であったとします。

  ・前期末3月(X-13月)の売上高は90であったとします。

 

 以上から、この期の期首月であるX-1年4月末日には、前月の売掛金90が入金されます。

その後、5月から期末のX3月までは、毎月末に100が入金されます。

そして期末月の3月には売掛金残高として100が未入金として残ることになります。

 

 つまり、この期における売掛金の入金額は1,200ではなくて、1,190となります

4月入金90+残り11か月の入金1,1001,190

 

 当期生み出したキャッシュを税引前当期純利益70と認識するのは、あくまで売上高1,200の全額が入金されたという前提です。ところが実態は1,190であることから、

この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益から10を控除して考えねばなりません

 

 

 第二に、棚卸資産、つまり在庫に着目します。

年間の売上原価は720ですので、ひと月あたり60が計上されます。

このとき、仕入分がキッチリ過不足なく売れるということは非現実的です。

欠品による失注を避けるために、恐らく余分に仕入れる分が生じるでしょう。

 

仮に毎月70ずつ仕入れたと考えると、毎月10ずつ在庫となり、1年間で120の在庫増加になります。

 

 冒頭に述べた様に、当期生み出したキャッシュを税引前当期純利益70と認識するのは、PL上に出現する入出金の加減算のみで考えているからです。

しかし、上述のように余分な仕入が発生して在庫が増えているのなら、その分も仕入先に支払う必要があり、出金額に加算する必要があります。

 

よって、この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益から120を控除して考えねばなりません

 

 

 第三に、買掛金を確認します。売掛金と同様に、以下の内容を設定します。

  ・仕入によって生じる買掛金は、「月末締め&翌月末支払」で代金を支払うこととします。

  ・毎月の仕入額は、前述のように毎月70ずつ、年間で840です(売上原価720+在庫増加分120)。

  ・前期末3月の(X-13月)仕入高は50であったこととします。

 

 この期の期首月である4月末日に支払う必要があるのは、前月仕入分の50となります。

その後、5月から期末のX3月までは、毎月70の支払となります。

そして期末月の3月には買掛金残高として70が未払いとして残ります。

 

 以上から、この期における買掛金としての出金額は、上述した原価分の720と在庫増加分の120を加えた840ではなく、8205070×11ヵ月〕となります。

よって、この期のキャッシュ創出額は、税引前当期純利益に20を加算して考えねばなりません

 

 

 ここまでの検証で、X期のキャッシュ創出額は、当初想定した税引前当期純利益70に対して、

売掛金の未入金分でマイナス10棚卸資産の増加分でマイナス120買掛金の未払分でプラス20

以上、110をマイナスして考えねばならず、マイナス40という状態になっています。

 

 

ただし、営業CFはまだ終わりません。

  続きは次回とします。