Loading

COLUMNSブログ「論語と算盤」

キャッシュフロー計算書 概観

2021年6月21日

財務3表と呼ばれる貸借対照表、損益計算書、

そして今回、キャッシュフロー計算書を概観します。

 

 

キャッシュフロー計算書は、上図のように3つのカテゴリーで構成されます。

 

1営業活動によるキャッシュフロー(営業CF

2投資活動によるキャッシュフロー(投資CF

3財務活動によるキャッシュフロー(財務CF

 

 

1)営業CF・・・主として、貸借対照表で説明した「営業循環過程」に関連する項目で構成されます。

 この営業CFをプラスにできない場合、会社の資金繰りは厳しくなります。

 

2)投資CF・・・読んで字のごとく、投資に関連するキャッシュの動きが明示されます。

 会社による株式や社債などへの投資もあれば、車両や機械装置など、

固定資産への投資も含まれます。

 

  ※上記の営業CFと投資CFを加算したものを

FCF(フリーキャッシュフロー:自由に使えるお金)と呼びます。

 

 投資CFは、今後の企業成長のためには最低限の投資が必要になると考えられることから、多くの場合においてマイナス基調となります(入金<出金)。

 そのため、営業CFがプラス化していないと、両者を合算したFCFがプラスになりません。

 

  FCFがプラス、あるいはマイナスの場合はどうなるのか?

それは続く財務CFに影響を与えます。

 

3)財務CF・・・損益取引ではなく、資本取引を中心とした財務的な資金の動きを表します。

 具体的な代表科目は、長短借入金の増減(借入と返済)、増資、

社債の発行と償還、配当金の支払等になります。

 

 上記のFCFがプラスの場合、借入金があるのなら楽に返済することができますが、

FCFがマイナスなら改めて借入や増資の必要性が高まるでしょう。

 

 

以上で、1年間のキャッシュの動きが表されることになります。

 

 

補足として以下の点を付け加えておきます。

 

・キャッシュフロー計算書の作成方法・・・直接法と間接法があります。

 通常、作成の簡便さから間接法が用いられるケースが多く、今回の解説でも間接法で説明します。

 間接法では、損益計算書の税引前当期純利益と減価償却費、そして貸借対照表については前期と当期の差額から算出していきます。

 

キャッシュとは?・・・貸借対照表の冒頭に記載される「現金・預金」が中心となります。

 非上場企業などでは、この「現金・預金」をキャッシュとして認識することが一般的です。

 これに対して上場企業などでは、キャッシュの範囲が定義されており、「現金(要求払預金含む)および現金同等物」と表示されます。現金同等物には、投資期間3ヶ月以内の定期預金やコマーシャル・ペーパーなどが含まれます。今回の解説では「現金・預金」としてシンプルに説明します。

 

キャッシュはいくら必要か?・・・必要なキャッシュ額は、業種業態によって変わってきます

 現金商売の代表格である小売業では、一般的に多くの現金は不必要とされます。その理由は、支払いは掛で入金は現金であるため、資金繰りは比較的容易と認識されるからです。よって月商一月分もしくは数週間分のキャッシュで十分かもしれません。一方、製造業や建設業などは、在庫仕入から販売代金回収までの期間が長期となるため、月商の数ヶ月分のキャッシュが必要になるかもしれません。

 

 

最後に、キャッシュフロー計算書の意義について解説しておきます。

 

 1990年に土地と証券バブルがはじけましたが、95年くらいまで実体経済は好調と言える状況でした。しかし、90年後半にはいよいよ悪影響が波及し、山一証券、日本長期信用銀行、北海道拓殖銀行、三洋証券、ヤオハン、三田工業など、一昔前に隆盛を誇っていた上場企業が次々と経営破綻していったのです。1997年にはアジア通貨危機(タイ・インドネシア・韓国がIMF管理下へ)も生じ、日本および日本を取り巻く経済環境が混乱していました。

 

 このときはまだ、日本の上場企業に有価証券報告書でのCF計算書の明示は義務付けられていませんでした。そのため、「PLが黒字」という企業への株式投資が主流でした。

 ところが90年代後半は、上述の様に上場企業における経営破綻が増え、特に「黒字倒産」が散見され、株式投資の健全性が問題視され始めました。

 

 当時も現在と同様、「貯蓄から投資へ」という掛け声が聞かれましたが、黒字企業が次の日に倒産する状態は、まさに「株式投資はギャンプルだからやめておこう」ということになりかねません。

そこで米国を見ると、上場企業にはCF計算書の提出が義務付けられていたことから、「それでは日本も」ということで2000年3月期から明示が義務付けられたのです。

 

 

 CF計算書により、黒字倒産の危険性は一定の判別がつくようになりました。しかし、財務諸表に対する認識が低ければ、どこをどう見て判断して良いのかはわからないでしょう。

 

 

キャッシュフローに対する知見は、事業運営面、投資面ともに

 

今後ますます重要視されてくるでしょう。

 

 

 

 ちなみに、1998年に私は中小企業診断士の3次実習を受けたのですが、実習先企業の資金運用表と呼ばれるものを徹夜で作り上げた記憶があります。

それを基にして、現金動向を明らかにしながら実習先企業に提言を行ったところ好評でした。そのときは本当に嬉しかったですね。

その経験が、この「算盤ブログ」を書けるようになったきっかけにもなっていると感じています。

 

ただ当時、CF計算書が現在のように一般的なものであったなら、

もっと私の作業も楽だったでしょうね・・・(笑)。

 

 

では次回は、営業CFを深耕してみましょう。

 

営業CFこそが、最も重要です。