販売費及び一般管理費(以下、販管費)と営業利益を考えます。
前回見た売上原価は、「財やサービスを生み出すためにかかった費用」でした。
今回の販管費は、その名のとおり「販売にかかった費用」と「管理にかかった費用」です。
売上原価で財やサービスを生み出し、
それを販売して売上高を生み出しながら、組織全体を管理するわけです。
売上総利益(粗利益)から、この販管費を控除することで「営業利益」が算出されます。
この営業利益は、「本業の利益」を表すことになります。(損益計算書の最初の回で解説)
よって、営業利益は企業の業績としてかなり重要です。
さて、販管費の勘定科目は非常に多く存在します。
社員に関わる費用だけでも、役員報酬や給与・賞与・雑給、退職金関連、社会保険等の法定福利費、福利厚生費、旅費交通費中の通勤費などがあります。
その他として一部を取り上げても、外注費、通信費、交際費、会議費、減価償却費、賃借料、地代家賃、リース料、燃料費、運賃、広告宣伝費、支払手数料、研究開発費、雑費などがあります。
これらは、企業ごとに使わない科目もありますし、金額や割合も様々です。
販管費は単なる「経費」として感じるかもしれませんが、実は結構奥深いものです。
まず、会社の強みが表れてくるという点です。
同業種でも、研究開発費の割合が多い企業とそうでない企業では、戦略が違っているはずです。
今後の経済社会情勢を合わせて鑑みると、どちらかが有利になると判断できるケースも出てきます。
また、同業種内で売上高の大きい企業では広告宣伝費の割合が高い、あるいは営業が強い会社は一人当たり人件費が高めであるなど、その企業が力を入れているポイントがうかがえます。
他方、先回見た売上原価は、一般的にそこまでの差異は生じません。
会社が自信を持って提供する財・サービスをしっかり生み出す費用となりますが、同時に、競争に打ち勝つために低コストであることも必要となります。
よって、製品差別化が顕著な場合などは別ですが、同業種内における差異はあまり生じないものです。
販管費の奥深さには、もうひとつ注意すべき点があります。
先ほど列挙した販管費の科目について、よく見てみると性質の違うものが混在しています。
具体的には、「固定費」と「変動費」です。
〇 固定費とは、売上に関係なく、一定額かかってくる費用です。
例えば、人件費の定額部分(残業代や賞与は除く)、減価償却費、賃借・リース料、交際費、
会議費など、販管費の大半を占めます。
これらは、売上の増減に関わらず、どうしてもかかる費用、あるいは売上に影響されずに予算化できる費用です。
〇 これに対して変動費とは、売上に比例して増減する費用です。
売上が増せばその費用が増え、売上が減ればその費用も減るという性質のものです。
例えば、外注費、通信費の一部、燃料費の一部、運賃、販売手数料、ショッピングセンター等で
見られる売上歩合方式の家賃などが挙げられます。
売上が増えれば必ず増え、売上が減れば必ず減るというのが変動費です。
この判断基準を明確にするために「交際費」を例に上げて考えます。
【得意先を接待すれば売上が上がる、だから交際費は変動費だ!】
これは間違いです。
交際費を1単位だけ使えば、売上も1単位だけ間違いなく増えるというのであれば変動費です。
しかし実態は違いますよね。
いくら飲ましてもほとんど売上が増えない得意先もあれば、飲まさなくてもしっかり増やしてくれる得意先もあります(笑)。
仮に、飲ました分は確実に売上を増やしてくれるとしても、接待した数日後に世の中の情勢変化で売上が下がるかもしれません。すると、上記の「必ず」ではなくなるのです。
結論として交際費は、年間の費用を予算化して各部署に割り振り、それを月次等適時に管理することが可能な費用です。よって交際費は、一般的には固定費と認識すべきです。
固定費なのか変動費なのかと迷ったら、上記のような考え方で判断すれば良いでしょう。
ところで、この固定費と変動費は、売上原価の中にも混在します。
よって、売上原価と販管費を経費全体として認識し、
それを固定費と変動費に区分して検討することが必要です。
それについては次回、
固定費と変動費が会社の収益にどういう影響を与えるか
という観点から確認してみましょう。