今回は固定費と変動費の状況によって、会社の収益がどう変化するかを考えてみます。
次のような費用構成の2つの業種を題材とします。
ともに売上高はひと月100万円で、営業利益額は8万円という現状です。
卸売業:小売店への商材卸を想定
🔶750円で仕入れた商品を1,000円で卸売販売しています。
🔶ひと月当たり1,000個販売しており、売上高は100万円です。
🔶売上原価は75万円となり(=変動費)、粗利益(=限界利益)は25万円です。
🔶そして、ひと月当たりの固定費は17万円、よって営業利益は8万円となっています。
サービス業:美容・理容室を想定
🔷1時間5,000円の料金でサービス提供しています。
🔷顧客1名あたり、シャンプーやリンス代として1,000円かかっています(変動費)。
🔷ひと月当り200人の顧客に対応し、売上高は100万円です。
🔷変動費は20万円となり、限界利益は80万円です。
🔷ひと月当たりの固定費は72万円であり、営業利益は8万円となっています。
まず、不況に対する抵抗力を比較してみましょう。
2020年のコロナ感染症の影響で、販売数量・顧客数が減少したとして、
どの程度まで耐えられるでしょうか?
卸売業・・・販売数量が3割減っても利益は出ます。
① 売上高=販売単価1,000円×(1000個×0.7=700個)=700,000円
② 限界利益=売上高700,000円-(変動費750円×700個)=175,000円
③ 営業利益=限界利益175,000円-固定費170,000円=5,000円
サービス業・・・顧客数が1割減少しただけで利益が無くなります。
① 売上高=販売単価5,000円×(200人×0.9=180人)=900,000円
② 限界利益=売上高900,000円-(変動費1,000円×180人)=720,000円
③ 営業利益=限界利益720,000円-固定費720,000円=0円
卸売業の方が、売上低下に対する抵抗力が大きいといえます。
コロナ禍のように、需要量が減少する環境下では、固定費が大きい業種、
例えばレジャーランドやスポーツジムなどのサービス業の赤字額が大きくなります。
次に、値引販売(低価格戦略)の結果を比較します。
低価格でライバルを出し抜く戦略は、どの程度効果的でしょうか?
☆両業種とも、販売価格を10%低下させて、その効果として販売数量が20%増加するとします。
卸売業・・・8万円の利益が1万円へ、9割ほど大きく減少してしまいます。
① 売上高=(販売単価1,000円×0.9)×(1,000個×1.2)=1,080,000円
② 限界利益=売上高1,080,000円-{変動費750円×(1,000個×1.2)}=180,000円
③ 営業利益=限界利益180,000円-固定費170,000円=10,000円
サービス業・・・8万円の利益が12万円へ、1.5倍の大きな増加となります。
① 売上高=販売単価(5,000円×0.9)×(200人×1.2)=1,080,000円
② 限界利益=売上高1,080,000円-{変動費1,000円×(200人×1.2)}=840,000円
③ 営業利益=限界利益840,000円-固定費720,000円=120,000円
値引販売の結果はほぼ真逆の結果となります。
的を射た施策を打たないと、ほとんど徒労に終わります。
収益を獲得するには、固定費と変動費を区分した上で戦略を検討することが必要です。
日々の活動を無駄にすることなく、成果につなげていかねばなりません。