Loading

COLUMNSブログ「論語と算盤」

流動資産は下手を打つと厄介(ⅱ)

2021年4月27日

流動資産のうち、今回は棚卸資産にフォーカスします。

 

 

 棚卸資産とは、平たく言うと在庫のことです。

製品・半製品商品仕掛品原材料貯蔵品、建設業界では未成工事支出金などの勘定もあります。

自社で製造した在庫は製品(製造した品)、他社から完成品を仕入れた在庫は商品(商いの品)、作りかけでも市場性がある在庫は半製品、作りかけで市場性のない在庫は仕掛品などと区分されています。

 

 

 基本的に、棚卸資産(以下在庫)はできるだけ少ない方が良いとされています。一般的な理由としては、キャッシュフローに影響を与えるためです。具体的には、在庫が多い状態は、その分の代金を支払っている、つまりキャッシュが出ていったわけです。その在庫が速やかに売れてキャッシュに転換してくれれば良いのですが、滞留在庫となると単なる金食い虫になります。

野放図な仕入によって在庫が過大になり、キャッシュ枯渇で経営破綻ということもあり得るのです。

 

 

 反面、小売・卸などの流通業では、欠品したら販売の機会損失(販売の機会を失うこと:Chance Loss)となるため、少な過ぎる在庫も心配になります。

業績向上と在庫削減という、相反する要素の上手なコントロールが必要なのです。

 

 

 ところで、製造業の場合は、キャッシュフローの改善のみを目的とすることは危険性を孕みます。在庫管理の総本山と言えるJITJust In Time)を生み出したトヨタ自動車は、製造工程の改善を進める経緯において在庫が削減され続けたのです。やや専門的になりますが、製造工程の不備や非効率さは、在庫増大につながるという因果関係が存在します。そのため、製造工程の効率化を進めて研ぎ澄ましていくと、結果として在庫は減少するのです。(もちろん、出口となる販売面の強化も必要です)

 

この点を明確に把握しておかないと、単にキャッシュフロー改善のためにだけに在庫削減を行ってしまうと製造工程に支障が出ます。製造工程の改善は在庫削減につながりますが、在庫削減が製造工程の改善につながるとは言えないのです。きちんと筋道を立てた取り組みでないと弊害を生むわけです。

 

 

 違った角度からでは、在庫管理がなおざりだと、経営そのものに致命的ダメージが生じることもあります。例えば、期末(決算期)の在庫を偽って多く計上すると、利益が膨らみます。いわゆる粉飾決算の手口であり、比較的手を染めやすいイカサマです。仮に粉飾の意図が無いとしても、正確な在庫量を把握していなければ、黒字化のために架空在庫を計上してしまおうとする動機が生じやすくなります。

 

ただし、実態にそぐわない粉飾・逆粉飾は、必ずしっぺ返しをくらいます。期末に偽って計上した架空の在庫量は、一晩明けると次期の期首在庫となります。すると、よほど収益状況が改善しない限り、次期の期末はさらに多くの架空在庫を計上せざるを得ない状況になります。これが3年も続くと在庫金額の推移が歪(いびつ)なものになり、第三者の疑念を誘発します。

 

棚卸資産の金額を計上している企業の場合、業種に限らず同じ危険性を孕んでいます。なお、建設業においては、仕掛品と同意の未成工事支出金という勘定項目が膨むケースが見られます。

 

 

たかが在庫と思うかもしれませんが、正しく扱って管理しないと、

大事なときに障害になりかねません。

 

慎重かつ正確な対応が必要です。