貸借対照表の資産の部、冒頭に表示されるのが流動資産です(流動性配列法の場合)。
個人的経験からの感想ですが、この流動資産の扱いはかなり厄介と感じます。
流動資産は、一般的には、当座資産、棚卸資産、その他流動資産に分けて把握します。
まず、当座資産には、現金・預金、売上債権、売買目的の有価証券が入ります。
現金・預金は、いわゆるキャッシュであり、潤沢であるほど経営継続の可能性が高まります。「金の切れ目が縁の切れ目」などと言われますが、諺ではなく、会社にとってキャッシュの枯渇は経営破綻に直結します。
黒字倒産という言葉を聞かれたこともあるでしょうが、損益は黒字でも、キャッシュが枯渇したために倒産するということも十分あり得ます。(このメカニズムは、改めてご紹介したいと思います。)
要するに、現金・預金は会社の命綱であり、最も重視すべき項目となります。
次は、売上債権。ここには売掛金、電子記録債権、受取手形が入ります。ただし、受取手形(約束手形)は2026年に廃止される方針です(2021年2月:経済産業省)。実は私、2003年10月に㈱かんき出版から、「手形・小切手の取引実務」を出版させてもらいました。あと5年も経つと、良く言えば古典(?)、悪く言うと過去の遺物になってしまいますね(笑)。残念!
それはさておき、これら売上債権は、経営が苦しい会社ほど残高が多いという特徴が見られます。ここでの「経営が苦しい」状態とは、キャッシュが常に不足がちで借金が多く、しかも年々増えていっているような経営状態をさしています。
この特徴の理由として、私は大きく2つを認識しています。一つは、会社として売上債権の回収意識が弱いということです。中小企業の場合、経営者の考え方からしてそうです。よって、売ったは良いが、代金を回収するのがずっと先になったりするわけです。その一方、原材料の支払いや各種の経費支払いは請求どおりに払うため、当然ながら手持ちの現金・預金は少なくなります。
二つめは、取引上のトラブルです。経験上、製造業や建設業などで見られましたが、顧客の発注に応じて納品・引き渡ししたものの、何らかのミスや不備が見つかり、代金の支払いを拒否されたり、減額されたりすることで、売掛金の残高が残り続けるというものです。この代金未回収分について、穴埋め的に借金をすることになるわけです。
このようなきっかけで、一時的にキャッシュが減少し、借金が生じるわけですが、簡単にはその体質から抜けられません。回収意識の薄さは、しっかりと意識改革して実行面を改善していかないと、借金体質のままです。取引上のトラブルは、一時的な問題として済む可能性もありますが、やはり良品を顧客に届けるという意識に基づいたオペレーションでない場合は繰り返されます。また、「類は類を呼ぶ」ではありませんが、イチャモンを付ける顧客が割と周りに居がちだったりもします。同じようなトラブルに見舞われることで、どんどんキャッシュが枯渇していくわけです。
3つ目に売買目的の有価証券がありますが、こちらは大きな問題は生じないと思われます。具体的には、例えば財テクのための株式などの有価証券(株や社債など)となります。換金性が高いため、企業の手元資金として認識されます。上場企業等大企業のキャッシュフロー計算書では、キャッシュ同等物として扱われます。
それとは逆に、売買目的でない有価証券、例えば子・親会社の株式や顧客から保有を要求された株式など、平たく言うと簡単に手放せない株式等の有価証券については、後ほど述べる固定資産の「その他固定資産」に計上します。同じ株式という資産でも、保有目的によって計上する場所が変わってくることになります。
売上債権という勘定科目に対し、会社員時代も含めて今までのビジネス経験から、
妙に縁があると感じており(機会があればコメントします)、少々長くなりました。
次回は棚卸資産、いわゆる在庫について述べようと思います。これも扱いには慎重さが必要です。