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COLUMNSブログ「論語と算盤」

貸借対照表は何を語る?

2021年4月12日

決算書の中で、貸借対照表(BS・・・Balance Sheet:残高表)は、

その重要性のわりには、仕組みや着眼点があまり理解されていないようです。

 

 貸借対照表が示すことは、資本の調達源の明細、その資本の運用先の明細です。

 

 

 

 上図のように、右側が資本の調達源の明細で、左側が資本の運用先の明細になるわけです。このことから、この会社はどこからどれくらいの資本を調達しているのか、そして、何にどのくらいお金を投下しているのかがわかります。

また、資本の調達源は、他人資本と自己資本に分けられます。他人資本は返済しなくてはならないもので、銀行からの借入金などが該当します。それに対して自己資本は返済の必要性のないもので、資本金や内部留保などで構成されています。

 

これだけであれば特別に面白くなく、何が重要なの?と言われそうですが、貸借対照表の上記のような特徴をよくよく分析すると、実はその会社の経営上の特徴が見えてくるのです。

 

 まず、他人資本が多い会社は、返済が必要という負の側面を負ってまで調達しているのですから、事業拡大を急いでいるケースや、経営状態が厳しいケースなどが想定できます。ただし、話はそう単純ではなく、例えば上場企業などでは、「レバレッジ効果」を生じさせて株主へ還元するために、意図的に他人資本を多く活用するケースもあります。

 他方、自己資本が多い会社は、一般的に経営基盤が安定しているという評価を受けます。しかしながら、例えば自社が属する市場が成長している時期においては、借入や社債などの他人資本を用いて積極的に投資し、市場シェアを少しでも多く獲得するような挑戦が必要になる場面もあります。

 

 他人資本と自己資本のバランスは、数値の大小や比率の違いだけで経営スタイルを線引きすることは困難です。ただし、定性情報も合わせて分析できれば、その会社の経営スタイルが「像」として現れ、特徴や方向性が浮かび上がってきます。

 

 次に、左側の資産には、調達した資本の運用先の明細が示されているのですが、売上や利益という業績と照らし合わせて、資本の運用が上手なのか、下手なのかが判別できます。例えば、資産には在庫も含まれますので、在庫過多というケースでは、せっかく調達した資本を滞留在庫に投資しているという悪い評価につながるでしょう。つまり、資本効率の視点から、その企業のマネジメント力が顕在化するのです。

 

 以上のように、貸借対照表からは、売上高や利益を生み出すために何をどうコントロールして会社を運営しているのか、その力量を洞察することが可能になります。もちろん、会社経営で最も重要といえるキャッシュ、このキャッシュを生み出す力の有無も貸借対照表から確認することができます。

 

次回は、貸借対照表の中身について、より詳しく見てみたいと思います。