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COLUMNSブログ「論語と算盤」

今後の景気動向を読むために

2021年4月6日

先行指数・・・実質機械受注

 2020年度は、完全にコロナ禍の経済でした。2021年4月、新しい年度となり、ワクチン接種も始まるようですが、まだまだ感染に対する油断はできない状況です。

 

今後の経済環境は、いわゆる「with コロナ」あるいは「after コロナ」としての対応が必要になるでしょう。では、景気はどのように動くのでしょうか?

経済は生き物ですので、間違いのないシナリオはありません。ただし私たちは、2020年度の1年間というコロナ下での経験を得ています。それを踏まえて、景気の先行きを読むことが必要です。

 

今回のテーマは、「実質機械受注」という景気動向指数にしました。

実質機械受注とは、統計法(平成19年法律第53号)に基づく一般統計調査の結果です。機械等の製造業者が受注する設備用機械類の受注状況を調査することで、設備投資動向を早期に把握することを狙いとしています。(内閣府サイトより引用)

 

 この「実質機械受注」は、景気動向に先んじて変化する「先行指数」とされています。なぜでしょうか。

例えば、食品メーカーや電気製品メーカーが、数ヶ月後に自社製品の販売拡大を計画したとします。その製造のために、製造用の機械類を産業機械メーカーに発注することになります。受注した産業機械メーカーは、指定された仕様の機械類を作り、完成後に発注先の工場に納品・設置します。そして試運転をして、問題がなければ本稼働となります。やがて生産されたものが出荷となり需要者の手元に届き、首尾よく進めば期待通りの販売が実現するのでしょう。

 

上記のように、食品・電気製品メーカーは、最終的に販売が増えることで景気拡大に貢献するのですが、その数ヵ月前に、産業機械メーカーに機械類の発注を行うことになります。

翻って見ると、産業機械メーカーの受注額を把握すれば、向こう数か月後の景気動向が読めるということになり、これが景気変動に先んじて変化する指数、「先行指数」となる理由となります。

 

 さて、実質機械受注の推移ですが、受注額合計(需要者総額の場合=民間需要+官公需+海外需要+代理店)でみると、コロナ前の2019年8月の2兆5403億円から、多少の上下変動とともに低下傾向で推移していました。その後コロナが国内で猛威を振るい始めた2020年5月に2兆円を下回り(2013年4月以来)、翌6月に1兆7926億円まで落ち込み、底を打ちます。その後は上昇傾向にあり、2020年12月は2兆4382億円と、ほぼコロナ前まで復元してきています。(令和3年3月15日付け内閣府サイト・・・内閣府経済社会総合研究所「令和3年1月実績:機械受注統計調査報告」より引用

 

 問題はこの後です。昨年7月以降の受注額の上昇は、各国におけるロックダウン政策(日本では緊急事態宣言)でコロナ感染者数がある程度落ち着き、国内需要に加え、中国等の海外需要が徐々に回復してきたためです。海外需要だけ見ても、2021年1月には1兆円超が予測されており、コロナ前の状態と遜色ありません。

今後の景気動向は、この推移を見る限り悪化材料は見当たらないと思われます。

 

 ちなみに、2021年に入り、アメリカを中心に、コロナ後のインフレが危惧され始めています。世界的に原材料や資源関連の相場が上昇しており、物流も相当にひっ迫しています。先日のパナマ運河での事故もその度合いを増す要因となりました。

加えて、既に欧米はワクチン効果が表れ、感染者数が激減しています。行動が自由になれば、今まで我慢してきた消費活動も促進される可能性が高いでしょう。

(個人的には、我が国を含め、この抑制され続けた消費活動が一気に爆発するのではないかと感じています。)

 

 以上を総合的に見ると、今後の景気は拡大が見込めるでしょう。ただし、その勢いは強すぎるかもしれません。インフレーションによる過度の物価上昇もリスクとして考慮する必要があるでしょう。

 

 我が国は、先進国の中ではワクチン接種が遅れています。そのため、当面は高まる海外需要への対応に際しても、引き続き感染対策を重視する必要があります。

そして、徐々にワクチン接種による感染者数が減少するに伴い、今度は国内需要が高まるという期待も持てます。

その一方、インフレによる行き過ぎた物価上昇で、それらの効果が相殺されるという悪いシナリオも捨て切れません。

 

 まずは自らの感染対策をしっかり行った上で、今後変化する経済環境に適切に対応することが必要です。