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COLUMNSブログ「論語と算盤」

寡占市場 ~携帯電話料金の行方~

2020年10月17日

携帯電話料金に対する政府の引き下げ圧力

  菅政権になり、各種の改革案が出てきています。

その中でも携帯電話料金の値下げは、私たち消費者にとっても期待したいところです。現在の携帯料金は、海外と比較しても高過ぎるようですね。

 

 ただ、民間会社の価格戦略に、政府がなぜ注文を付けるのかという疑問を感じる方もいるかもしれません。

市場経済からすると、需給関係で価格が決まるというのがルールではないかと…。

本来そうあるべきですが、我が国における携帯電話市場は、市場(価格)メカニズムが機能しづらい「寡占市場」の状態であることが問題であり、そのために政府が働きかけているという構図です。

 

 寡占市場とは、2社から5社程度の供給者で、市場シェアがカバーされている状態を言います。ちなみに1社なら独占市場、2社の場合は複占市場とも呼んだりします。

 この寡占市場における供給者の行動には、次のような特徴があるとされています。

 

 ①3社のうち1社が値上げした場合(収益状況を改善させる目的など)

  残りの2社は、この状況をジッと静観します。

  値上げを嫌った顧客が、自社に流れ込むのを待つわけです。まさにタナボタです。

  この結果、値上げした1社は、収益改善どころか市場から退出することになるでしょう。

  よって、寡占市場における値上げ戦略は、自社の首を絞める致命傷となります。

 

 ②3社のうち1社が値下げした場合(低価格戦略で市場を席捲する目的など)

  残りの2社は即座に追随、値下げします。出し抜かれては困るからです。

  この結果、3社の価格は横並びになり、顧客数も以前から変化しません。

  そして、提供する価格(単価)が下がるために、3社とも売上高が減少してしまいます。

  つまり、値下げ戦略にも魅力はなく、自社の経営を苦しくしかねないわけです。

 

 このような特徴のため、寡占市場では価格が上がりも下がりもせず、硬直的になりやすいのです。

携帯大手3社としては、特段の差別化戦略を行わず、静かに事業活動を継続することが最も企業収益を良くする手段と言えるでしょう。

現に、携帯大手3社の利益額が極めて大きいということが指摘されています。

 

そしてそれは、消費者がしわ寄せを被っているということです。消費者は、どこと契約しても価格やサービス(通信速度など)の差がほとんど無い状態で、メリットも感じず、高い料金を毎月取られている状況です。

 

 民間プレイヤーの自助努力には期待できないこの状況を打開するには、一国政府による圧力(というか、調整というか)が必要になるというわけです。

 

企業行動は、ときに市場のメリットや消費者の利得を毀損する結果を生むことがあります。

現世代、次世代のため、より良い経済社会を創っていくには、老舗の大企業だからと言って遠慮することなく、この国を支える国民である私たちが、しっかりとその行動を見定めることが大切です。

まさに、「論語と算盤」の考え方が必要になってくるわけです。

 

 

以上、「算盤」ブログの初テーマとして、携帯電話料金が硬直化する理由についてアップします。