ドラッグストア業界の4回目です。
今回は、「資本活用力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本回転率、
売上債権回収日数、棚卸資産回転日数、
流動比率、自己資本比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【総資本回転率】
〔総資本回転率=売上高÷総資本〕
トップはウエルシアHDです。
売上高と総資本、ともに3期連続の拡大です。
両者の拡大度合いは絶妙とも言え、3期連続で概ね2.2回転を維持しています。
2番手はコスモス薬品です。
当社も売上高と総資本がともに3期連続で拡大しています。
微妙に逓減しているものの、3期連続で概ね2.1回転を維持しています。
続いてサンドラッグです。
僅かですが3期連続で逓減しています。
売上高と総資本の両者が3期連続で拡大していますが、後者の拡大度合いの方が大きくなっています。
そしてツルハHDです。
4期間とも4社中4位であり、また3期連続で低下しています。
純資産も増えていますが、直近2期は有利子負債が大きく増えるなど、総資本の拡大幅が売上高を超えています。
【売上債権回収日数】
〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕
最も短期間なのはコスモス薬品です。
キャッシュレス決済を採用しない現金商売の強さが表れています。
反対に、顧客の利便性向上要求にどう対応していくのかも気になります。
2番手はサンドラッグです。
各種のキャッシュレス決済を導入されているでしょうが、比較的短期間に収まっています。
続いてウエルシアHDです。
2020決算期で長期化しましたが、直近2期間は平準化しています。
そしてツルハHDです。
2021決算期に長期化し、直前期もさらに伸びています。
【棚卸資産回転日数】
〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕
最も短期間なのはコスモス薬品です。
2020決算期で短縮化しましたが、直近2期間は長期化の傾向です。
2番手はサンドラッグです。
41日前後での安定的な推移となっています。
続いて僅差でウエルシアHDです。
直近2期間は長期化しました。
そしてツルハHDです。
3期連続の長期化となっています。
【流動比率】
〔流動比率=流動資産÷流動負債〕
トップはサンドラッグです。
総資産の6割強を流動資産が占めており、一方の流動負債はその半分程度という状況です。
2番手はツルハHDです。
総資本回転率で有利子負債の増加を指摘しましたが、流動負債に含まれる短期の有利子負債はあまり増えていません。
一方、流動資産として現金が増えているのは良しとしても、前述のとおり棚卸資産が売上高伸長率以上に増えているのは気になります。
ちなみに当座比率(当座資産÷流動負債)は100%以下となります。
続いてウエルシアHDです。
僅かながらですが、3期連続で上昇しています。
直前期では流動負債が抑制されました。
そしてコスモス薬品です。
流動比率を安全性で見る場合、100%以上が必須とされていますが、現状では満たしていません。
特に目立つのが、流動負債中の買掛金残高の多さ(流動負債の85%強)です。
原価ベースで3ヵ月弱分の買掛金となっています。
ただし、月々の決済については何ら問題のない状態のようです。
【自己資本比率】
〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕
トップはサンドラッグです。
調達している総資本の約2/3が自己資本となっています。
完全無借金経営(長短有利子負債がゼロ)であるが故でしょう。
レバレッジを利かせるような取り組みは行わない方針のようであり、安定成長を狙っていると映ります。
2番手はコスモス薬品です。
利益剰余金が相対的に大きく、有利子負債が少額である点がこの値を押し上げています。
流動比率では劣等生と見なされますが、自己資本比率では優等生です。
続いてツルハHDです。
値としては何ら問題ないでしょうが、4期の推移は不安定です。
また低下度合いも大きく、この点については否が応でも気になります。
この2021決算期での低下は、長期の有利子負債を増やした(約53億から約267億へ)ことが主因です。
そしてウエルシアHDです。
40%台を確実にキープしています。
ROEとの兼ね合いも見定めた上でのコントロールかもしれません。
今回、特に気になったのは、ツルハHDの悪化傾向です。
総資本回転率の低下、そしてなにより直前期における売上高減少に対して、売上債権回収日数と棚卸資産回転日数が長期化しているという点が気になります。
今回の「資本活用力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
今回は以上です。
次回は、「資金力」を見ていきましょう。
※当サイトの「注意・免責事項」ご確認ください。