一家仁なれば、一國仁に興り、一家讓なれば、一國讓に興り、一人貪戻なれば、一國亂を作す。其の機此の如し。此を一言事を僨り、一人國を定むと謂う。
(一家の中が互に仁の心を以て和やかに睦み合えば、自ら仁の気風が国中に満ちるようになる。一家の中で互に譲り合えば自ら国中に我を捨てて互に譲り合い、力を尽す美風が興ってくる。然し君主が貪欲で道理を無視して我侭であると、国中挙って乱を起すようになる。このように治乱興亡のはずみは甚だ微妙なものである。これを昔の人が、一言の使いようで事をやぶり一人のはたらきが国を安定させる原動力となると謂うのである。)
<出典:『『大学』を素読する』伊與田覺著 致知出版社>
国を治める
ここは、八条目の〝 所謂國を治むるには、必ず先ず其の家を齊う 〟ということの背景や根拠を記す途中の言葉です。
国が治まっているとは、どのような状況でしょうか。
私は、その国の人々の思いや願いが、一つの方向を向いていることだと考えます。
仮にそうだとして、では、そのような国は現在あるでしょうか。
我が国日本については、その政においての評価は決して高くはないでしょう。
現代の政治家は、国家の方向性を示すことなく、国民に迎合する姿勢や、他者のミスや欠点をあげつらって攻撃する態度が目立ちます。
心ある国民でさえ、半ば呆れ、あきらめている感さえあります。
国民は、将来に対する漠然とした不安を感じてはいながらも、特段の行動や発言は控えているのが今の現状ではないでしょうか。
そんな中、昨年、日本初の女性首相が誕生しました。
国会答弁のとき、経済大国としてのし上がってきたお隣の某国との関係において、道理というものをきっちり、つまり〝筋を通した〟主張を行ったことは記憶に新しい。
これに対してその某国は、狼狽えたかのごとく、必死の表情で反論しています。
しかしそれは、その家臣たちの地位・金銭・保身という個人的な利害のために、その哀れな姿を露呈させているように映ります。
この某国
国民の心が
一つになっているとは
到底思えません
逆にこの一件で、日本の国民は思いを一つに寄せることができたのではないでしょうか。
我が国にはまだまだ〝 仁と義 〟の心が残っている、“ 財 ” に溺れ振り回されるような、情けない民族ではないと感じます。
ひとり一人
一つひとつの家族が
〝 仁 〟の心
〝 譲 〟の心
それを育むことで
国は治まる
他方、もう一つの経済大国では、“ 貪戻 ” な指導者が国内に乱を生じさせています。
(“ 貧 ”は、“ むさぼる ”、“ 戻 ”は、“ 劣る ” の意)
この某国では、すでに内乱といえるような “ 心の対立 ”、国民同士の争いが顕在化してきています。
紀元前四百年以上前に記された
この『大学』という書物
その知恵の活用が
なされていない様子
このままでは「人類とは、学ぶことができなかった生物のこと」として終焉を迎えることになるでしょう。
一言の使い方が事を破り
あるいは事を正し
一人の働きが国を乱し
あるいはまとめ上げる
治乱興亡のはずみは微妙であるからこそ
私達一人ひとりの
考え方と言動には
繊細さが求められます
<参考:『『大学』を味読する 己を修め人を治める道』伊與田覺著 致知出版社>