尭舜天下を帥いるに仁を以てして、民之に從う。桀紂天下を帥いるに暴を以てして、民之に從う。其の令する所其の好む所に反すれば、民從わず。是の故に君子は、諸を己に有して后諸を人に求め、諸を己に無くして后、諸を人に非とす。身に藏する所恕ならずして、能く諸を人に喩す者は、未だ之れ有らざるなり。故に国を治むるには、其の家を齊うるに在り。
(聖天子の尭や舜は、自分で仁愛の徳を修めてそれで天下を統率したから、民衆もそれに従って仁愛を行ない、暴君の桀や紂は、自分で暴虐を行なってそれで天下を統率したから、民衆もそれに従って暴虐を行なった。しかし、君主の命令が君主のほんとうの好みとはうらはらだというときは、そんな命令に民衆は従わない。そこで、君子はまずわが身に徳を積んでからはじめて他人にもその徳を求め、まずわが身に不徳を無くしてからはじめて他人にもその不徳を非難する。わが身の内にあるものによって他人を思いやるということをしないで〔、一方的に相手を責めるだけで〕いて、それで他人をうまく納得させたという人は、あったためしがない。だからこそ、国を治めるにはまずその家を和合させることになるのである。)
<原文:『『大学』を素読する』伊與田覺著 致知出版社>
<現代語訳:『大学・中庸』金谷治著 岩波文庫>
自らの考えや行動を改善した上で
他者に指導する
これが〝 恕 〟
つまり思いやり
新社会人が入社する時期です。
会社の中で仕事を指示されたとき、なぜそれをするのかについてよく確認することと言われます。
ただ、良いとは思いながらも、全面的には賛同できません。
スポーツの世界では、素直な人が伸びると言われます。
例えば野球なら、監督から素振り百回と指示されたら、早速取り組むわけです。
しかし、もし素直でなければ、なぜ素振りなのかと疑問に思うかもしれません。
それよりも、投手やマシンが投げる球を打つ練習の方が効果的でないか。
素振りなんて意味がないと思っているかもしれません。
確かに、初心者であるほど、実践的な練習の方が上達するかもしれません。
しかし、野球を続けていくつもりなら、自分のスイングの型、正しい型を身に付けることが大事なはずです。
短期的に見れば
効率的な取り組みでも
長期的に見れば
実力や地力が身につかないかもしれません
仕事でも、同僚にものを頼むとき、「○○さん、ちょっとよろしいでしょうか」と気遣いすることが大切とされます。
しかし、結論優先を重視し、「○○さん、△△のデータをすぐに入力してください」と突然言う人もいるでしょう。
この人の論理を探ると、「丁寧に接するだけ時間のムダ。○○さんと私の仕事では、明らかに私の仕事の方が会社への貢献度合いが大きい。会社は業績を向上させることが命題だから、伝えるべきこと、指示すべきことは単刀直入に発すべき。丁寧さなどを重視していると競合に負けかねない。」ということかもしれません。
このような主張に
きちんと対応できますか
短期でみれば、この人の言い分にも相応の利点が認められます。
しかし長期的に見れば、従業員同士の軋轢は大きくなり、やがて組織の体力・地力が衰えかねません。
一つの理由は
別の理由を生じさせる
君子は
思いやりとともに人を諭す
思いやりの根源は
家族との関係
家において学ぶ〝 孝・弟・慈 〟
これの習得によって人物を高める
君子のような人物
それは〝 恕 〟のある人物
こんな人の指示であれば
有無を言わずに
素直に応じられるでしょう
どんな立場でも
また家族の大きさにも関わらず
家をまとめあげること
それが
世の中への貢献につながるのでしょう