世道・人心・民生・国計、此れは是れ士君子の四大責任。這裏都て経略あり。都て能く張主す。此れは是れ士君子の四大功業。〔捨遺〕
(世の中の道、人の心、民衆の生活、国の経済・財政は世の指導者達の四つの大きな責任である。このうちすべてにそれぞれそれだけの筋道・方法・手段がある、それをよく弁えてやっていけばすべてよく開き統べることができる。活用することができる。これが士君子の四つの大きな功業というものである)
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
世の指導者達の四つの責任
いまのわが国では、世道と人心はほぼ無視されており、民生(民衆の生活)、そして国計(国の経済・財政)にしか関心が無いようです。
しかし、その民生と国計についても、侃々諤々、あちらを立てればこちらが立たずというように、混乱の度合いはますます深まっているようです。
一方
〝 世道 〟と〝 人心 〟
ひとりの人間としてこの世を生き抜くためには、幼少からの教育において最も重要な事柄ではないでしょうか。
ところが、この領域の教育はほとんどなされていません。
学校がきちんとせよ、いや家庭で育むべき教養だというように、過去に論争はあったはずですが、いつの間にかなし崩し的に何もしないような方向に落ち着いてしまったような感があります。
これからの日本を背負って立つ
今の子供たちにとって
この領域の教養を施してあげないのは
酷と言えます
先日、ある雑誌に次のような記事がありました。
食の道で一人前になりたいという人が有名な匠の店に弟子として入ったものの、雑用しかやらせてもらえない日が続いたので3ヵ月我慢したけど辞めてしまったという内容です。
よく耳にする話です。
この人は、要するに格好良い仕事がしたい、評価されたい、感謝されたい、持ち上げられたい、というような願望でこの道に入ろうとしたのでしょう。
仮に店前の掃除をすることが雑用だというのなら、食材を包丁で等間隔に切る作業も雑用であるはずです。
とどのつまり、従業員は全員、日々雑用をこなしているわけで、組織のトップや店主、シェフにしても、仕事の8割以上は雑用なのです。
雑用ばかりの毎日の中、本物と雑魚の違いは、何を考えてそれを行っているか、に尽きます。
どんな職種でも同じ
仕事を行うには、第一に自分の動機を明らかにしておくことが肝心です。
お客様に喜んでもらうためなのか
自分が偉くなりたいだけなのか
このような自分の動機、本心を知るには、自分に問い続けねばなりません。
自分と向き合う時間をもち、それを習慣として継続し、問題を解決していく力が必要です。
かの京セラの創業者、故稲盛和夫氏でさえ、現KDDIを立ち上げる際に「動機善なりや 私心なかりしか」(一社独占の牙城NTTに挑戦しようという動機は、本当に善の心から生じたものなのか?自分の名誉など私利私欲に端を発したものではないか?)と半年間毎日自分に問い続けたそうです。
これは、仕事における人間学の一面です。
そしてもう一つが、その仕事の意義、歴史、本質を学び、身に付けること
これがなければ、安易な思い付きによる混濁した製品やサービスを生み出してしまいます。
これが、仕事における時務学の一面です。
〝 世道 〟
できるだけ深い領域まで
身に付けておかねば
人生は拓かれません
次回(呻吟語の項)は、〝 人心 〟についての教えを取り上げます。