詩に云わく、殷の未だ師を喪わず、克く上帝に配す。儀しく殷に監みるべし。峻命易からずと。衆を得れば則ち國を得、衆を失えば則ち國を失うを道う。是の故に君子は先ず德を慎む。德有れば此れ人有り。人有れば此れ土有り。土有れば此れ財有り。財有れば此れ用有り。
(詩経(大雅文王篇)に「殷は善政を施してまた人望を失わず上帝(天)と並んで天子の位にいたが、紂に至り暴政を施して人望を失い、遂に天位を失ってしまった。そこで殷の変遷を見て、自らを顧みる鑑とせよ。天の大命はそうやすやすと降るものではない」とある。これは衆望を得れば国を得、衆望を失えば国を失うことをいうのである。
※『詩経』では「殷の王朝がまだ民衆から見放されなかったときは、立派に上帝さまの心にかなっていたのだ。〔今や殷は滅びた、〕殷を手本として戒めなければならぬ。大いなる天命を維持するのは容易なことではない」とうたわれている。<引用:『大学・中庸』金谷治訳注 岩波文庫>
そこで君主は先ず徳を慎んで積む。そうしてその高徳の君主を慕って自ら四方から集まってくる。人が集まって来れば、土地が拓ける。土地が拓けると財物が多く生産されるようになる。財物が多く生産されれば、そこからいろいろなはたらきが活発に起こってくるわけである。)
<出典:『『大学』を素読する』伊與田覺著 致知出版社>
一国を保つために
組織を保つために
重要なことは何か
それは間違いなく
天の大命に従った
責務を果たすこと
国や組織の長が、常にこの姿勢で運営に携わっているのなら、国民や組織に属する人たちは、何の疑念もなく真直ぐに行動することができます。
他方で、企業は営利を目的としており、利益を追求する組織であるから当てはまらないという意見も出てくるでしょう。
しかし確実に
当てはまります
企業が生まれた理由、具体的には経営理念や組織の責務が天命に従ったものであるのなら、人々は安心して働くことができる、貢献できると感じ集まってきます。
そうでないのなら、人々は離反してきます。
例えば、利益や我欲のために、道理を無視した行いを強いる長であれば、人々は自らの尊厳を手放さなければならなくなります。
これは苦しみであり、本来の人としての姿ではありません。
心が痛み、苦悩し、あるいは諦め、生きる意義を感じられない日々を消費することになります。
そんなところは真平御免と、そんな組織からは離脱するでしょう。
しかしながら、天の大命として、万人が賛同するような国・組織の運営を維持することは至難です。
あっさり煩悩の誘惑に負けてしまうことも容易に想像できます。
現実的にも、私利我欲に塗れたリーダー、そんな者の力による統制ばかりが目につきます。
国を保つためには、人々の心からの賛同と協力、これを得ることが必要です。
人々からの賛同や協力が得られなければ、国や組織は陳腐なものとなり、崩壊の道をたどることでしょう。
高潔な長
人望ある長
その出現に期待するのは
他人任せの責任転嫁でしかないのでしょうか
大多数の人々を牽引するような運営は確かに難しいものです。
天の大命を担い続けたリーダーは、歴史的にも認識できますが、代が変われば、往々にしてその国や組織は頽廃していっています。
一人ひとりが天命を感じ取り
少ないながらも
小さいながらも
少しずつでも
その責務を担おうと努力し
未完全ながらも
成し遂げようとがんばるのなら
一国や一組織のみならず
地球全体が輝くはず
一灯照隅 萬燈照国
(最澄)