所謂其の意を誠にすとは、自ら欺く毋きなり。惡臭を惡むが如く、好色を好むが如し。此を之れ自謙と謂う。故に君子は、必ず其の獨を慎むなり。
(八条目に「其の意を誠にす」というのは、自分が自分を欺かないことである。それは丁度悪い臭いをかいだら本能的に鼻をすくめ、好きなよい色を見れば、本能的に目を見開いて見ようとするようなものである。これを自らあきたる「自謙」(謙は慊に通ず)というのである。そこで君子は必ず自ら自分で独りを慎むのである。)
<出典:『『大学』を素読する』伊與田覺著 致知出版社>
格物・致知に続く八条目の〝 誠意 〟です。
そしてここでは、〝 慎独 〟の大切さも述べています。
〝 誠意 〟とは、自らを欺かないということ
誠意というのは、例えば教科書に示されているようなものではなく、自らの価値観や判断基準によって、自らを正していくことによって形作られるものです。
昨日、数年前、遠い昔の出来事に対して、あのとき、自分の言動は正しかったのか、自らを騙していないか、格好を付けたかっただけではないか、無難にやり過ごそうとしただけではないか、反省は尽きません。
まさに、この反省が〝 慎独 〟であり、〝 自謙 〟です。
〝 自謙 〟の意味は、解説にあるように「あきたる」、つまり自己満足することです。
自分の正直な気持ちとして納得できること
それと違う行動は、自らを欺くことになるわけです。
自らの価値観と合わない振る舞いをする人を見かけます。
近年では特に、自治体の長、組織の長、教師など
本来、君子のような人物であるはずの人たち
“悪臭”を放つ人は、決して君子ではありません。
“悪臭”は多くの人が感じることであるため、世間に明らかになるとやがて消えていくでしょう。
多くの人が持つ人としての価値観
それこそが生きる道理であり道徳
それを明確に認識するために
〝 慎独 〟が必要なのです
他人に及ぼした些細な迷惑
これを慎独で認識し、改善していかない限り、再度やってしまうでしょう。
注意すべきは
単に事を荒立てようとしないことや
保身のために人間関係を壊さないようにすること
そんなことではありません
〝 人として正しい振る舞い 〟
それを考え実践することです
そして、この慎独を続けなければ、やがて人の心の道理、道徳から逸脱します。
誰に評価されるわけでもない
〝 慎独 〟
それをきちんとやっていく
なんのために
大自然の中に生かされている生命として
お天道様に恥じない生き方を貫くため
そして
世を良くしていくために
『大学』で非常に重要なことが、この慎独です。
我々が立派な人間になる
その一番基本になるものが慎独なんです。
<下記書籍より>
<参考:『『大学』を味読する 己を修め人を治める道』伊與田覺著 致知出版社>