利を興すには太だ急なること無かれ。左視右盼せんことを要す。弊を革むるには大いに驟かなること無かれ。長慮却顧せんことを要す。〔治道〕
(何か利を興すというのには性急であってはいけない。よく左右をみることが大事である。弊害を除去するのにはなるべく速かにやったらよいというわけのものではない。長く考え且つしりぞいて顧ることが大事である。)
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
政の要諦
利を得るに急ぎ過ぎてはいけない
自らが統治する領域内で利を得る機会を得たとしても、すぐに飛びついてはいけないということです。
利を得ようとすると、隣国や自国内の別の関係者に逆の側面、つまり害が及ぶかもしれません。
弊害を改めるにも、急がず、多面的に、大局観をもって検討した上で、取り掛かれとのこと。
わが国でもいろいろな制度化や法制化が進んでいますが、弊害の面を大きく取り上げ、排除される側の要素は軽視されがちです。
原子力発電の稼働、働き方改革、夫婦別姓、同性愛者同士の婚姻、・・・
こんなことを言うと、推進派から目くじら立てて批判されるでしょう。
ただ、そういう現象も現代が生み出した傾向です。
この世、宇宙、天、道、大自然、生み出されるものに無駄はないはずです。
無駄のように見えるのは、陰と陽という二面のうち、どちらか一方が注目されたことによって現れ出でた現象です。
そのため、拙速に排他してしまうと、もう一方が肥大化して調和が乱れることになります。
その、もう一方の側にも利点があるものです。
ビジネスでは、利に対する行動は早く、費用削減も速やかに、となるでしょう。
一つのパイを奪い合う、資本・市場主義の行きつく先はそれでしかありません。
こういうビジネスの領域で、世界で戦える人材を生み出そうと学校教育が構成されています。
そのため、多くの人に自分さえ良ければという概念が蔓延っているようです。
電車に乗った若者が高齢者に席を譲らない
席を譲ってもらった高齢者は礼を言わない
経済学にゲーム理論という領域があります。
“ 囚人のジレンマ ” の事例は、この学問の基本的な考え方です。
これは、おもしろいことに、相手の行動に影響が与えられないという前提において、自らが高い利益を得ようと行動したら、お互いが最貧となる選択をしてしまうというものです。
逆に、相手と話し合い、協力し合って協調的行動をとれば、最大の利益が得られるのです。
現代は
社会の調和が崩れていく
その過程にあるようです
まずは
自分自身の周辺から
調和を取り戻す取り組みを始めませんか