山髙故不貴 以有樹為貴 人肥故不貴 以有智為貴〔實語教〕
山髙きが故に貴からず。樹有るを以て貴しとす。人肥たるが故に貴からず。智有るを以て貴しとす。
(意訳:山は高いから貴いのではない。樹があるから貴いのである。人は肥えているから立派なのではない。智恵があるからこそ立派な人なのである。)
<参考書籍:『實語教童子教 改版』馬喰町 錦耕堂山口屋藤兵衛板 解説>
山が貴いのは樹があるから
山に樹がたくさんあれば、山全体に樹の根が張り巡らされ、土砂崩れが起きなくなります。
多種多様な動植物が集まる場となり、山全体が肥沃な土壌になります。
その栄養は河川を通じて海に注がれ、海の生物が養われます。
また、樹を適切に伐採することで、私たち人間は家屋や橋梁、各種の道具類を作り生活を便利することができます。
山、川、海
それぞれで食物連鎖が機能し
生きとし生ける多くの生命が
地球上を躍動することになります
反対に
樹の無い山は
たとえ標高が高くとも
このような機能は働きません
やがて
自然の力で風化し崩れ
平地になっていくでしょう
人もおなじ
肥えた人は、贅沢な食事をして、享楽的な日々を送っているのかもしれません。
それは貴いことでしょうか
やっていることは、消費、見栄を張ること、贅沢のさらなる追求・・・
山が持つような対外的な機能は全く見出せません。
自分だけが良くなりたいというのは
幼稚な心から生じる単なる我がままです
またその快楽が
長く続かないことに
やがて気づくことになります
たまたま贅沢な環境になった時、と言うより、なってしまった時、智恵の有無、そしてその質の高さが問われます。
いま世界は紛争に明け暮れています。
実際の戦争
経済的な奪い合いの欲の紛争
領土を奪取するための威嚇の紛争など
平和は
与えられるものではありません
一人ひとりが
智恵を用いて
創り上げていく
工夫と努力が必要なものです
表面的で浅薄な価値観に振り回されず
真の価値を捉えて
智恵を養い
行動に移していきましょう