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COLUMNSブログ「論語と算盤」

土中の宝

2025年4月1日

下輩の言葉は助けて聞け。金は土中にある事分明〔直茂公御壁書〕

(下輩とは百姓、町人、下級の武士等々、殿様である直茂とは正反対の極に身を置いている人々である。これらの人々は生活の重荷を背負い、大地に足をつけて生きている。その切実な体験のなかにこそ、書物からでは学ぶことのできない「土中の金」、すなわち貴い真理がひそんでいるのである。

 だが、こうした人々は生活半径がせまく、教育も受けてはいない。当然、ものの考え方は一面的であり、発表の仕方も拙劣である。だから、その言葉のなかから矛盾や弱点を見つけ出し、一笑に付してしまうことも簡単であろう。

 こうして「土中の金」はそのままに捨てられてきたのである。

 このような人々の言葉をきくときは、まずそのいおうとするところを察し、言葉の足りぬ点は補いながら、辛抱づよく真理をくみとろうとする態度が大切である。)

<出典:『葉隠』原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

 

『葉隠』の紹介として、最後の言葉となります。

 

 

 

重要な教訓です。

 

 

 後輩や部下、生徒、自分の子供など、年少者の言葉に対して、通常では重きを置かない傾向が強いでしょう。

 

ただし、このような人達が訴えてくる言葉には、往々にして切実な真実が含まれています。

 

よくよく耳を傾けて、一言一句を吟味し、拾い上げていくことが望まれます。

 

そして同時に、重要な言葉を抽出し、彼ら彼女らが見たもの、置かれた環境を想像することです。

 

 

 

 

会社組織であれば、それが新しい取り組み、技術革新や新製品開発につながるかもしれません。

 

相手が生徒や子供ならば、彼ら彼女らを成長させる糸口が見つかるかもしれません。

 

 

 

 

 語る言葉全体を文章化して受け止めてしまうと、真実が隠されます。

 

諭そうとしたり、諫めようとしたり、アドバイスしたり、単純に共感したりしても、真実は見えません。

 

全てを聞いて、相手の心情からその状況を体感し、眺めてみて、何が生じているかを把握するのです。

 

 

 

〝 土中の金 〟に気付き、拾い上げて真理を学ぶこと

 

 

〝 土中の金 〟とは

  儚い財物ではなく

   子々孫々まで残せる財産

    真理であり知恵なのです

 

 

 

 

富是一生財

身滅即共滅

智是萬代財

命終即随行

 

とみ是一これいっしょうたから

めっすればすなわともに滅す

は是万代ばんだいの財

いのちおわれば即ちしたがって

 

(富は自分の一生の宝物ではあるものの、死んだら何の役にも立たない。

  知恵は万代の宝物であり、たとえ死しても子々孫々へ受け継がれてゆく。)

 

<実語教>