Loading

COLUMNSブログ「論語と算盤」

理想の実現

2025年2月11日

死の後を知らんと欲せば、まさに生の前をるべし。昼夜は死生なり、醒睡せいすいも死生なり。呼吸も死生なり。〔晩二八七〕

(死後のことを知ろうとするならば、生まれる前のことを観るとよい。昼が生なら、夜は死である。目覚めているときが生ならば、眠っているときは死である。吐く息が生ならば、吸う息は死である。)

<出典:『言志四録 佐藤一斎』渡邉五郎三郎監修 致知出版社>

 

 

 

 

 死後の世界は、万人が気になることです。

 

しかし、その話題が語られることは、さほど多くありません。

 

考えても仕方ないということでしょうか。

 

それよりも、いまをどう生きるかに意義があるという意見の方が納得できます。

 

 

 

 

 ただ、最も大切なのは、その〝いま〟をどういう基軸で捉えるかということ。

 

 

幼い頃に

 人を救いたい

  この世を良くしたい

   社会を豊かにしたい

 

こんな夢を熱意とともに感じた人は

 医者や僧侶

  政治家や官僚

   生産者や商売人を

    目指すことになるでしょう

 

 

その動機に濁りはありません。

 

純粋に、病気の人や迷える人を救いたい、公平で公正な世を創りたい、たくさんの農産物を収穫し、多くの人に行き渡らせたい、つまり皆が喜び合う世界のために役立ちたいという思いです。

 

 

 

理想とした未来の自分の姿

それを実現させるために

長い年月のあいだ

成長し続ける

 

 

 

その思いを自分の心の中で燃やし続けることができる人は、それだけで成功の道を歩むことになります。

 

そこには〝自分の生〟があります。

 

 

自分の力でこの世に貢献したい

 

〝自分の価値観・判断基準が基軸〟

こう捉えて今を生きる

 

 

 

 

 一方で、自分の心の声を聞き取れず、〝他人の評価や他人の価値観を基軸〟として生きる人が圧倒的に多いのが現実です。

 

誰よりも成績を上げ、誰よりも先に出世し、組織のトップに就く。

 

会社の規模を大きくし、多くの付加価値を生み出す。

 

地域№1、日本一、世界一へと

 

 

 

気がつくと

与えられた価値観の中で彩られた経歴

それがうやまわれる環境はすでに無く

自らが蚊帳かやの外にいる感覚

 

組織メンバーや部下たちは

トップの想いなどお構いなし

自分のためだけに仕事をする姿

 

 

 

 

やがて代替わりの時期がきます。

 

うまく出世できなかった人たちには退職のときがきます。

 

そしてそれぞれ、たった一人の普通の人に戻るのです。

 

誰も敬ってくれません。

 

皆が注目する土俵で勝負する機会、そしてその土俵さえ、もはや存在しないのです。

 

 

 

過去において

〝そのとき〟・〝いま〟を

真剣に捉えて戦う日々

それは有意義だったでしょう

 

ただ

晩年は少し寂しいものです

 

 

 

 

 

 前述の〝自分の生〟を生きてきた人たちは、死ぬまで理想を追うことでしょう。

 

 

たとえ環境や立場が変わっても

心のともしびが燃え続ける限り

 

 

 

 

人遠ひととおおもんばかり無ければ、必ずちかうれい有り

 

(遠くを思いめぐらすことがないと、必ず身近なところに心配ごとが起こるものだ)

<論語 衛霊公第十五>

 

 

 

 

そのとき、そのときを

やり過ごすのではなく

 

未来の理想像の実現に向けて

一分一秒に真剣に取り組み

死ぬかのように床につく

 

そんな一日の生き方

それで一生を生きぬく

 

これが本来の人間の自然な姿