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COLUMNSブログ「論語と算盤」

最高の芸

2024年12月27日

芸を以て身を立つるは芸者なり。人の芸を取立て御用に立つるは侍の芸なり〔直茂公御壁書〕

 (ここにいう芸とは、ひろく才能、技術の意味に解すべきであろう。

 封建の制が次第に固まり、武士たちの役目も葉隠にいう「槍突きの奉公」だけではなくなってくる。とくに中堅以上の武士ともなれば、藩という行政機構の幹部職員として、組織、管理、統率といった職能は果たしていなければならない。

 さまざまな人々の能力を判断し、これを最大限に発揮させて主君の御用に立てるという能力は今日においても最も次元の高い〝 芸 〟といえよう。)

<出典:『葉隠』原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>

 

 

 

 

スペシャリストよりもゼネラリスト

 

 

人を活かすことこそ

最も次元の高い

〝 芸 〟

 

 

 

 

 

日本には、古くは徳川家康、近代では西郷隆盛や渋沢栄一というような、人を活かすことのできる優れた指導者が多数いたようです。

 

しかし戦後においては、目立った人は数えるほどしかいません。

 

 

バブル経済に向かうにつれ中間管理職が大量生産されましたが、人を活かすような高度な芸を有する人は僅かではなかったでしょうか。

 

バブルが崩壊した後は中間管理職の存在意義が問われるようになり、プレイング・マネージャーという立ち位置になってきます。

 

こうなってくると、もはや人を活かす〝 最高の芸 〟など見る影もなくなります。

 

 

 

 

 一方で、人類の長い歴史において、数多くの検証の末に生き残ってきた東洋古典には、人を活かすことの重要さが数多く示されています。

 

 

『大学』

 

秦誓に曰く、もし一个の臣有らんに斷斷として他技無く、其の心休休として、其れ容るる有るが如し。人の技有る、己之れ有るが若く、人の彦聖なる其の心之を好みし、啻に其の口より出ずるが如きのみならず、寔に能く之を容る。以て能く我が子孫黎民を保んぜん。尚わくば亦利あらん哉。人の技有る、娼疾して以て之を悪み、人の彦聖なる、之に違いて通ぜざら俾む。寔に容るる能わず。以て我が子孫黎民を保んずる能わず。亦曰に殆い哉と。

 

 (秦誓<書経周書の篇>に、ここに一人の重臣がある。生真面目ではあるが特に秀でた才能があるわけではないが、その心はおおらかで、すべてのものを包み込むようである。人の秀れた才能のあるのを見て、自分があるように喜び、人が大変立派だという評判があると、それを心からよいとして、単に口先でほめるだけでなく、本心からこれを受け容れる。こうして我が子孫万民を保んずるであろう。まことに心から利があるように願うばかりである。

 それとは逆に、人の才能のあるのを悪み、人が秀れて評判がよいのを見て世に通じないようにする。このように本心から包み込むことができない。これでは子孫万民を保んずることはできない。なんと危いことだなあとある。)

 

<引用:『『大学』を素読する』伊與田覺著 致知出版社>

 

 

 

『重職心得箇条』

 

些少の過失に目つきて、人を容れ用いる事ならねば、取るべき人は一人も無之様になるべし

(小さな過失にこだわり、人を容認して用いることがないならば、使える人は誰一人としていないようになる。)

 

功を以て過を補はしむる事可也

(功をもって過ちを補わせることがよい。)

 

平生嫌ひな人を能く用ゐると云う事こそ手際なり。此工夫あるべし

(平生嫌いな人を良く用いる事こそが腕前である。この工夫がありたいものである。)

 

<引用:『佐藤一斎『重職心得箇条』を読む』安岡正篤著 致知出版社>

 

 

 

『成功の秘訣』

 

成功本位の米国主義に倣ふべからず、誠実本位の日本主義に則るべし。

 

人もし全世界を得るとも其霊魂を失はゞば何の益あらんや。人生の目的は金銭を得るに非ず。品性を完成するにあり。

 

<引用:『成功の秘訣』内村鑑三 月刊『致知』2025年1月号 致知出版社より>

 

 

 

 

 私たち日本人は、ガラパゴスと言われることさえ誇らしい、そんな独自の文化、藝術、考え方を復元、習得し、世界に類稀なる存在になることが大切な使命ではないでしょうか。

所詮、他人の真似ごとなどに存在意義はないのですから。

 

アングロサクソン流の経済市場に飛び込むのは、我々日本人にとってディスアドバンテージの海であり、アングロサクソンの意図した奴隷に成り下がるがオチではないかと感じます。

 

表面だけの華やかさに憧れるのは賢明ではありません。

 

 

 

ぶんぶんと

障子にあぶの飛ぶみれば

明るき方へ迷うけりなり

 

(二宮翁道歌 引用:『二宮翁夜話』福住正兄原著、佐々井典比古訳注 致知出版社)