知識は心の孽なり。才能は身の妖なり。貴寵は家の禍なり。富足は子孫の殃なり。〔談道〕
(知識は心のわざわいである。才能は身のまがごとである。位貴くして愛せられるのは家の禍である。富みて足るは子孫の殃である。)
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
人生の禍について
その本質が述べられています
なまじ知識をつけてしまうと、それに振り回されて、得してやろうと良心や誠実さを害してしまいかねません。
なまじ才能があれば努力を怠り、手っ取り早く得をしようと悪事に用いかねません。
地位が高い家柄のため人々から崇められているのは、利用しようと思われているからです。
地位が高いだけで人間が不遜なら、愛されることはないでしょう。
もしその家が没落したら、最初からそんな家は無かったかのように人々はそっぽを向きます。
何かの成功によって富を得てしまうと、悦に入ることになります。
子や孫にまで驕奢な生活を与え、周囲から忌み嫌われる人間にしてしまいます。
やがて相続となると、いわゆる骨肉の争いを招き、さもしい餓鬼どもの修羅場を生み出すだけです。
私たちは、知識が豊富であったり、才能があったり、地位や富を得た人を成功者と呼びがちです。
しかし、真の成功者は極めて少数であり、大半が自ら掘った墓穴に落ちて行っています。
安岡師は本書の中で、「人が為すと書いて “ 偽 ” という字ができておる。どうも本物と偽物との区別がなかなかつかぬものであります。」とのこと。
かなりの時間を要して
もしくは他界してからしか
その人が本物だったかどうか
わからないのかもしれません
これら禍を避けるための “ 道 ” を明らかにした二宮尊徳(金次郎)
翁が示した「至誠」「勤労」「分度」「推譲」は、正しく生きていくための勘所といえます。
およそ世の中は
知恵があっても学があっても
至誠と実行とでなければ
事は成らぬものと知るべきだ
<出典:『二宮翁夜話』福住正兄 原著 佐々井典比古 訳注 致知出版社>
地位や富に心を奪われることなく
至誠を尽くしていきたいものです