費の省たるを知るは、善く省する者なり。省を以て省となす者は愚なり。其の費必ず倍す。労の逸たるを知るは、善く逸する者なり。逸を以て逸となす者は昏なり。其の労必ず多し。苦の楽たるを知るは、善く楽しむ者なり。楽を以て楽となす者は癡なり。一たび苦しめば返らず。通の塞たるを知るは、善く塞する者なり。塞を以て塞となす者は拙なり。一たび通ずれば必ず竭く。〔談道〕
(費用を抑える要点を知っている人は、上手に倹約することができる。十把一絡げに費用を節約するのは愚かであり、余計に費用がかかることになる。時には費やすことが倹約につながることもあるのである。働くことで得られる安らぎを知る人は、安らぎの本質を知っている。何もせず、安楽に過ごすことが安らぎであるとする人は愚かであって、余計に働かねばならなくなる。苦しみが楽になることを知っている人は、よく楽しむことができる。楽しむことが楽であるとする人は馬鹿であって、一度苦しむとそれに負けて参ってしまう。通じることはすなわち塞がることであることを知っている人は、上手に塞ぐことができる。塞ぐことで塞げばよいとする人は拙い者であって、一度通じると極まってしまう。)
※現代語訳は筆者による意訳
<出典:『呻吟語を読む』安岡正篤著 致知出版社>
我が国は1950年代以降、高度経済成長で物質的に豊かになりました。
しかしその勢いは徐々に失われ、1990年のバブル崩壊以降の経済活動は衰退する一方となっています。
この事実を、今日の言葉は鋭く捉えており、表しています。
景気が良くないので
一律に経費を削減する
一律での対応は、その会社の “ 強み ” に悪影響を与え、“ 弱み ” はさらなる足枷になっていきます。
削減すべき経費を正しく捉えられず、また利益を生み出す勘どころを知らない多くの会社は、ますます衰退の一途を辿ります。
汗して働くことで
喜びや安らぎが得られる
この道理を忘れ
一日中だらだらのんびり過ごす
それが喜びや安楽だと勘違いする
過去に得た富を食いつぶす日々であれば、やがて生活は困窮し、働く動機を身に付けていないため、その人の人生は朽ち果てるでしょう。
生活保護受給者は増える一方です。
苦しんでこそ
努力や修業をしてこそ
楽しみや自信が得られ
展望が開けてくる
このことを知らず
楽しんでいることが楽である
そう思い込んでいる人は
もはや手の付けられない馬鹿
人生に必ず訪れる、努力や修業が必要な場面で消え去ることになるでしょう。
ビジネスは
付加価値の提供とその見返り
これによって成立することに気付かず
資源を買ってやる
製品を売ってやると
根拠のない殿様商売で
世界と通じた日本経済
やがて相手は選択肢を広げ、日本に資源を売ってやる・製品を買ってやるとなり、日本は買わせてもらう・買ってもらうという状況へ
安い中国製品を買ってやるというような態度だったのが、やがて生活必需品の首根っこを押さえられて身動きができなくなる
一人の人生も同じ
一家の盛衰も同じ
“人間というものは逆境よりも順境、禍よりも幸に弱いものであります。
持たざるよりも持った方が、病弱よりも健康の方がむしろ注意しなければならない。
人間は得意・成功の方が失意・不遇よりは危ない。素朴よりも文明の方が危ない。
これは人間の通則であり、また人間の微妙なところであります。”
<同書籍 著者安岡師の解説より抜粋>
“ 真実 ” とは “ 当然 ” のことです
その “ 当然 ” を知ろうとせず
一時的な感情に身を委ねる
これが崩壊への道なのでしょう
“ 当然 ” のこと
それを直視せねばなりません