天下国家を治むると云ふは、及ばざる事、大惣の事の様なれども、今天下の老中、御国の家老、年寄中の仕事も、此の庵にて、話し候事より外はこれ無きものなり。是にて成程治めてやる事なり。結句、あの衆は、心元無き事あり、国学を知らず、邪正の吟味せず、生付の利発任せにて、諸人這廻り、おぢ恐れ、御尤もとばかり申すに付、自慢私欲出来るものにて候となり。〔聞書第十一〕
(天下国家を治めるなどというのは、とうてい及びもつかぬ大変な仕事のように思えるが、現在、幕府の老中、藩の家老や年寄の人々がしていることも、この庵で私が今まで話してきたこと以外の何ものでもない。この心得によって立派に国を治めていけるものなのである。
結局のところ、あの人々には心配なところがある。お国の伝統も知らず、正邪の判断をせず、持って生まれた才気にまかせて仕事をしている。人々がその権力をおそれて、ただごもっともとばかりいっているから、ますます慢心と私欲が出てくるものなのだ。)
【訳者解説】現在、国政の中核にいる人々に対する痛烈な批判をもって全巻の結びとしている。
<出典:『葉隠』原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>
“ 治政の根本 ”
と名付けられた本書全巻の結びの言です
今も昔も、一国を治めるための肝心要は、その国のあるべき姿を信念として持ち、国民に表して賛同を得、それに基づいて政を進めていくことでしょう。
現代は先の見えない時代と言われており、ビジョンを掲げづらいという反論もあるかもしれません。
しかし、見方を変えると、先の見えない時代というのは上手な言い訳であり、見ようとしていない無責任さなのではないでしょうか。
今後、心配なことはたくさんあります。
しかし、確実に訪れる事柄を杞憂しても時間の無駄です。
人口は減少するでしょう。社会保障費はさらに増大するでしょう。独裁・専制国家によるスパイ活動、洗脳、軍事的挑発はますます盛んになってくるでしょう。
他にもたくさん確実なことはあります。
ところが
いまの我が国には
これらの心配事に対して
どう対処すべきかの
策略が無い様子
逆に、大衆迎合と呼ばれるバラマキ政策で支持率を下げないようにしている姿は、何とも情けない次第。
これらの財政政策は
国として向かう先が
明確にされていれば
国民の健康な生活のために
やむを得ない出費として認識され
バラマキなどとは呼ばれないはず
とにかく
一国として
向かう先が
見えていません
そんな中、子供を産めというのは、まるで心太のように押し出し、生まれた後は自分で生きていけ、とにかく年金を支えてくれればよい、という印象しか与えないでしょう。
フランスの画家ドラクロワが描いた
《民衆を導く自由の女神》が思い出されます
人々を一致団結させて導いていく
“ 本物 ”
本当に一人もいないのでしょうか
現代は、世界中の指導者も迷っている様子です。
そんな中
強固に映るのが
専制国家の独裁者の姿
その愚かさは
嘲笑ものでありながら
その残虐さが
人々の心を搔きむしる
これが独裁者の狙い
民主主義は、明らかに霧の中を彷徨っています。
国を支える義務感や責任感は失われ、自由だけを手に入れようとする人々ばかりになってきています。
そんな民主主義の国を、専制国家が侵略するのは容易なことでしょう。
神は
「自分勝手なばかりの集団は
一度独裁されて地獄を見よ
そしてそこから勉強し直せ」
とでも言っているのでしょうか。
My fellow Americans:ask not what your country can do for you - ask what you can do for your country.
(国民の皆さん、アメリカという国家が何をしてくれるかと問うのではなく、皆さんがアメリカという国家にどう貢献できるかを問うてください。)
My fellow citizens of the world:ask not what America will do for you,but what together we can do for the freedom of man.
(世界各国の同志、アメリカがどんなことをしてくれるのかと問うのではなく、人類の自由のために、われわれが共に何を成し得るかを問うてほしい。)
<大統領就任演説 第三十五代大統領のジョン・F・ケネディ>
一国のリーダーは
自国の文化を深く理解し
正邪の判断基準を正しく有し
自国のあるべき姿について
明確に表現して信を問うべきです
それができない政治家は
不適格者として
国民が交代させねばなりません
また
一人ひとりの国民は
“ 自由 ” には “ 義務と責任 ” が
付随することを確実に認識し
自国の文化を深く理解し
正邪の判断を正しく有し
自国を支えていかねばなりません
導く側
と
支える側
真剣勝負を
続けていくこと