人情、吉に趨き凶を避く。殊に知らず、吉凶は是れ善悪の影響なるを。余、歳を改むる毎に四句を暦本に題し、以て家眷を警む。曰く、「三百六旬、日として吉ならざるは無し。一念善を作さば、是れ吉日なり。三百六旬、日として凶ならざるは無し。一念悪を作さば、是れ凶日なり」と。心を以て暦本と為さば、可なり〔晩二五二〕
(人情は、吉を求め、凶を避けるものである。しかし、特に吉凶というものは、その人の行いの善悪がもたらしたものであるということを知らない。
私は歳が改まるごとに、次の四句を暦に書き記し、家族の戒めとしている。その四句とは、
「三百六十五日、一日として吉日でない日はない。一念発起して善を行えば、これが吉日である。三百六十五日、一日として凶日でない日はない。一念発起して悪を行えば、これが凶日である」
というものである。つまり、自分の心を暦にすれば、それでよいのである。)
<出典:『言志四録 佐藤一斎』渡邉五郎三郎監修 致知出版社>
自分の人生は
自分の心が創ります
良くないことを考えて行えば、自分の人生も良くなりません。
善いことを考えて実行すれば、自分の人生には花が咲きます。
しかし多くの人は、自分の一日を成り行きに任せています。
その日起こったことで、良い一日、良くない一日と考えて一喜一憂しがちです。
周囲の環境に自分を任せて一喜一憂してはいけません。
それは、あなたの一日なのに、その主の座を誰か他人に任せることになります。
その一日を吉にするには、善いことを行うことです。
そして朝目覚めたとき、それを自分に語りかけましょう。
これで今日というあなたの一日は、あなたが主となります。
行うべき善はいくらでもあります。
笑顔で挨拶をする、すみませんではなくありがとうと言う、他者と共有するものをきれいにする、困っている人に声をかけて助ける、辛そうな人を手伝う・・・。
そんな行為で、その一日を吉に仕上げていくことができるのです。
人は損得勘定に振り回されがちですが、得したところでたかが知れています。
もし得したら、もっともっとと要求しますが、大抵そこまでです。
たまにうまくいくときもあるでしょうが、時の流れがご和算にします。
損得 “ 勘定 ” で得られる損や徳という “ 感情 ” は、移ろい、流れていく “ フロー ” です。
何も意義を与えてはくれません。
しかし善悪 “ 感情 ” は、決して “ 勘定 ” ではなく、心を動かす “ ストック ” です。
善の積み重ね、吉の日を増やすほど、人生が豊かになるのです。
どんな人でも
人の情から隔絶されて
生きることはできません
人は必ず
人と寄り添い合うのです
人の情は
この世で最も強い力です
その “ 情 ” を損得に使えば
争いごと、戦争さえ生みかねません
その “ 情 ” を善悪で捉えれば
平和な世を創り上げることができます
人生は 心一つの 置きどころ
~中村天風~