人、我れに就きて事を謀らば、須らく妥貼易簡にして事端を生ぜざるを要すべし。即ち是れ智なり。若し穿鑿を為すに過ぎて、己れの才知を逞うせば、卻って他の禍を惹かん。殆ど是れ不智なり。〔晩二五〇〕
(他人が自分に相談にやってきたときは、穏やかに簡潔に意見を述べ、争いの種にならないようにする。これが智慧というものである。
もしも、細部をほじくり突き詰めて、自分の才知を振り回すと、かえって別の禍を引き起こしかねない。これでは相談に応ずる智慧がないも同然である。)
<出典:『言志四録 佐藤一斎』渡邉五郎三郎監修 致知出版社>
相談事
感情が入ったものほど
解決が難しくなります
そんな相談を受けたとき
当事者としていかにあるべきか
それを簡潔に伝えるのがよいでしょう
簡潔さが大切です
望ましい言動について、こと細かに偉人の事例などを語り出すと、逆に相手に伝わりづらくなります。
望まれる終局の状態を簡潔に伝えられれば(もちろん相手が納得できる内容であることが前提ですが)、後は相手が自分なりに思いを巡らせて、置かれた状況下において何をどう対処していくのが良いか、考えや知恵が生まれてくるでしょう。
逆に、相手の話の細部まで聞き取って、状況が把握できたつもりになって、個々の問題に対して一つひとつ処方箋の如く対処方法を伝授したとしても、相手の相談事の解決には至らないでしょう。
相手は、これをこうして、それからああして、そうすると確かに良くなるな、と感じるかもしれませんが、知っていることと実行することは大違いです。
他人に教えてもらったやり方を、付け焼き刃的に用いても、他者を納得、行動させることは無理です。
逆に、相談相手が信用されなくなってしまう可能性さえあります。
人にはそれぞれ違いがあります。
相談相手である当事者本人が
自分のやり方で
置かれた状況の中において
良い方向に変えていくことこそが
最も効果的なのです
そのために
いかにあるべきかという大枠を示し
それを相手の心の中心に置かせるのです
それをどういうふうにやっていくかは
その現実に直面している
本人のやり方に委ねるのです
納得できますか
共感できますか
難しいでしょうね
述べてきたように
こと細かに伝えること自体が
相手の心に入り込むことを
困難にしてしまうのですから
相談事への良い対処は
今日の言葉そのものです
細かく突き詰めるほど
野暮になります
今日の言葉を念頭におき
相談相手の力になれればと思います