人と事を共にするに、渠れは快事を担い、我は苦事を任とすれば、事は苦なりと雖も、意は則ち快なり。我は快事を担い、渠れは苦事を任とすれば、事は快なりと雖も、意は則ち苦なり〔晩録二四三〕
(人と仕事を共にするときに、彼が楽しい仕事を担当し、自分が苦しい仕事を担当するとすれば、仕事は苦しくても、心の中は楽しい気分である。ところが、自分が楽しい仕事を担当し、彼が苦しい仕事を担当すれば、仕事は楽しくても、心の中は苦しいものである。)
<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>
こんな心掛けの人ばかりなら
その集団・組織は一致団結するでしょう
助け、助けられ、協力しあう
そういう状況が目に浮かびます
しかし今日
逆の場面が散見されます
組織の長が楽を担い
苦は部下に押し付ける
部下が出来なければ叱責する
自分の弱さを覆い隠すための攻撃
結局のところ自分を守るパフォーマンスをしているだけ
経済学にゲーム理論という考え方があります。
AとB両者が、「協力する」と「協力しない」という2つの選択肢のどちらを選ぶかについて考えるものです。
下表で説明します。
Aとしては、もしBが「協力する」であれば、「協力しない」を選択した方が利益は13となり、「協力する」を選んだときの10よりも大きくなります。
また、Bが「協力しない」であれば、同様に「協力しない」を選択した方が利益は2となり、「協力する」を選んだときの0より大きくなります。
以上から、利益を得ようとするなら、Aは必ず「協力しない」を選択することになります。
このことは、実はBの立場でも同じです。
よって、両者はともに「協力しない」を選択し合って、両者合計4の利益を得ることになります。
「協力する・しない」のマスは、自分が「協力する」を選択すると利益が0になるので、やむを得ず「協力しない」に移動することになります。
よって両者は、「協力しない・協力しない」のマスから動くことができなくなります。
このことは、お互いが十分な満足を得られないことから、やがて相手を征服しようと争いを生じさせることになるかもしれません。
しかし、ともに「協力する」を選んだら、両者の利益の合計は最大の20になることもわかります。
ゲーム理論の考え方には、「フォーク定理」というものがあります。
互いが最大の利益を得るためには「協力し合う」ことが必要だという認識です。
例えば、限られた範囲の地域で生きている2つの部族があり、食料となる獲物を共有している場合、どちらかが腹一杯になろうと獲り過ぎると、翌年の獲物はほとんどいなくなり、両部族とも餓死者を出す状況としましょう。
この場合、両部族がお互い腹6~7分目で抑えることで毎年その量の獲物を確保していけるのなら、「協力し合う」ことが得策になるでしょう。
これが、「一族」や「民族」と訳される「フォーク」、そこから名付けられた「フォーク定理」なのです。
古くからの知恵ということです。
現代人は古人よりも「読み・書き・算盤」がずっと上手にできますが、集団のため、種のためになる古の知恵を忘れ去っていないでしょうか。
絶滅の可能性が最も高い種
それは人類
今から1万年後、地球に栄えたある生物の論文には
「地球40億年以上の歴史の中で最も栄えた種はホモ・サピエンスであった。
しかし彼らは、ほんの一瞬の地球環境の良好さが永遠に続くものと勘違いし、
生存してしていくために必要な原理原則の知恵を古いものとして捨て去り、
目先の欲を優先させる行為に溺れてしまった。
有能であったが、一方で哀れで愚かな種であった。
彼らの歴史は、たかだか20万年であったと推測される。」
と記されないようにしたいものです。