奉公人に疵の付く事一つあり。富貴になりたがる事なり。逼迫にさへあれば疵は付かぬなり。また何某は利口者なるが、人の仕事の非が目にかかる生付なり。この位にては立ちかぬるものなり。世間は非だらけと、始めに思ひこまねば、多分顔付が悪しくして人が請取らぬものなり。人が請取らねば、如何様のよき人にても、本義にあらず。これも一つの疵と覚えたるがよし。〔聞書第一〕
(奉公人の失敗する理由が一つある。それは富貴を望むことだ。貧困に甘んずる気持ちがあれば失敗はしないものである。
また、頭はいいが、人の仕事の欠点ばかり目につくという性格の者がいる。こういう気質の者はうまくいかない。初めから、世間というのは欠点だらけのものだと思いこんでかかれば、かえってうまくいくのである。完全なことを求め、わずかの欠点も見逃すまいとすれば、自分の顔つきが悪くなり、人が近づこうとしなくなる。人に避けられるようでは、どんなりっぱな人物でも、奉公人の本分をつくすことはできない。これも失敗する一つの理由だと心得ておくがよい。)
<出典:「続 葉隠」原著 山本常朝/田代陣基 神子侃編著 徳間書店>
一般に、成功とは富貴を得ることかと感じます。
多くの人がそれを望み、憧れるのでしょう。
しかし、富や名声は単なる飾り物でしかないと認識できれば、進むべきは自己修練の道であると覚悟が決まります。
貧困に甘んずる気持ちで臨めば必ず失敗はない。
そして自己修練、人間学の習得は外的要因に関わらず成し得るもの。
こうなると
人は全て成功することになります
皆が皆、このような思いであれば
争いごとなど起こらないでしょう
オグ・マンディーノ著「世界最強の商人」に記された成功の核は「愛」とのこと。
そして、儲けの半分は恵まれない貧しい人々へ施しを行うこととされています。
どのような世界、文化においても、生きて行くための王道は、人を大切にし、人の役に立つことであることに変わりはないようです。
後段の言には実感があります。
頭の良し悪しに関わらず、他者の非や欠点をあげつらう人はよくいます。
そして、口に出さずともそう思っている人たちとなると、かなり多数ではないでしょうか。
若いころの私も、多分にそうだったと思い返します。
野心的でやる気満々なときこそ、この傾向が強くなるように感じます。
それに対して、「初めから世間というのは欠点だらけ」と思い込んでしまえば「かえって上手くゆく」とのこと。
喝采するほどの気づきです
忘れず日々心がけます
「やればできるのである。しかし急ぎすぎてはならぬ。
“ゆっくり急げ”という言葉があるが、良い言葉である。
やってみても、なかなか自分の思うようにはいかぬことが多いが、くさらずに続けることである。
希望をもって続けることである。」
<出典:「平澤興一日一言」平澤興著 致知出版社>
〔七月十七日〕