万民の上に位する者、己を慎み、品行を正しくし、驕奢を戒め、節倹を勉め、職事に勤労して、人民の標準となり、下民その勤労を気の毒に思う様ならでは、政令は行われ難し。
(人の上に立つ者は、いつも身を慎み、品行を正しくし、驕らず偉そうな態度をせず、節約に努め、それぞれの仕事に一所懸命に励んで、国民の手本となるべきだ。
加えて、その仕事ぶりや生活ぶりを、納税する国民が「あんなに身を粉にして働いて」と気の毒に思うくらいにならなければ、施策や政府の命令はスムースに行われないものだ。)
<出典:「西郷南洲遺訓」桑畑正樹訳 致知出版社>
一国の政治に携わる人としての心がけとして、理想的な姿が描かれています。
身分の格差が残る時代とは違うでしょうが、現代でも充分通用する内容です。
現状は、今日の言葉と裏腹に、利己的な言動が中心になっていることが見透かされています。
日本の将来について、そして自らが他界した後についての考慮も踏まえた政治を行っているような姿勢は、残念ながらほとんど見受けられません。
もちろん、「無い物ねだりをしても意味がない。政治家に聖人君子を望むのは無理。政治家は、風向きを捉えて、国民や地域が良くなるようにしてくれさえすれば良い。」という考え方もあるでしょう。
この場合は、私たち国民が、政治家を上手に使うことが必要です。
いずれにせよ私たちには、個々の政治家の人物像をしっかりと見定める眼力が求められます。
しかし、私たち自身にも問題があることも忘れてはなりません。
私たちは、未来を生きる子孫のために、日本そして世界をどうしていくのか、どのような理想を実現するのかという視点が弱まっています。
もはや、現代の若者たちは黙っていません。今まで目をつむってやり過ごしてきた環境破壊や不都合な真実について、積極的に声をあげ始めています。
コロナ禍で自分と向き合う時間が多くなった昨今、時代の転換点になるかもしれません
JR九州の『ななつ星』を手掛けた工業デザイナーの水戸岡鋭治氏は、働くことに関して、
「理想を言わずにほかに言うことなんか何もない」とのこと。
(引用:1日1話読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書:致知出版社)
これは本人の意図も含め、世間一般の全ての事柄に当てはまると考えます。
私たちは、「良くなる」ために生きています。「良くなる」ために努力できます。
いま、求められているのは、理想について考え、自分の意見を持ち、語り合うことでしょう。