Loading

COLUMNSブログ「論語と算盤」

苦悩と成熟

2022年4月1日

愛敬あいけいの心は、すなわち天地生生の心なり。草木を樹芸じゅげいし、きんちゅうようするも、またの心のすいなり。

(慈しみ敬う心は、天地が万物を育てはぐくむ心と同じである。草木を植え、鳥や虫を飼育するのも、またこの愛敬の心を推し進めたものである。)

<出典:「言志四録 佐藤一斎」渡邉五郎三郎監修 致知出版社>

 

 

 

生きとし生けるものを愛し敬うこと、その心を持つこと。

 

それは天地が成すことと同じ、天地の心と同じ。

 

 

若い頃、きれいごとではないかと、疑ってかかっていました。

 

しかし、歳をとり

命の終点に近づいていることを感じ始め

改めて考え直します。

 

本当は、もっと早く気付くべきなのでしょう。

 

 

 

 先日、ある中学生の立派な発言を聞き、感心しました。

多くの場合、当然とも言えますが、

模範解答のような借り物の言葉で編み上げられるものです。

 

しかし、その中学生の発言は、

偽りのない本心として、

私の心に突き刺さってくるものでした。

 

 

 

自分が中学生のとき、彼の言葉のかけらでも語れたか

 

 

 

 

 

私が愚か者だとしても、あまりにも違い過ぎる

 

この理由はいったい何なのだろうと考えたとき

 

幼少~思春期の見聞、体験の違いではないかと感じます。

 

 

高度成長の終焉後、経済もまだ伸びていた時期

 

聞こえてくるのは、前を見て進めという勢い

 

そんな雰囲気に囲まれて育った自分

 

 

 

しかし、いまの子供たち、

未成年の子供たちは、全く違った時代を生きています。

 

 

毎年のように我が国に降りかかる天災

しかし、人災はそれ以上かもしれません。

 

SNSの脅威、オレオレ詐欺、香港の共産化、ミャンマーの軍事化、テロ組織に支配されたアフガニスタン、そしてロシアのウクライナ侵略・・・、

 

この10年間、可能なら目をつぶりたいことが、あまりにも多く生じています。

 

そして、どれも一切解決できていません。

 

 

戦慄、戸惑い、怒り、絶望、あきらめ、やるせなさ、無力感・・・

 

人生経験の少ない子供たちに

この時代をポジティブに生きろというのは

無理な話と感じざるを得ません。

 

 

不条理と感じる社会の現状、大人は誰も答えを出してくれません。

 

文明が進んだはずのこの世の中において

  本当に大事なことが一切解決できていない人間の無力さを

    子供たちは目の当たりにし

      自らの肌に染み込ませんばかりに学んでいます。

 

 

 

しかし、だからこそ、一人の人間として、

 

成熟するスピードが速くなっていると感じます。

 

 

人間のあらゆる業

 

醜く傲慢で残酷な行為

美しく逞しく立派な行為

 

 

いまの子供たちは、前者を目の当たりにしていますが、

 

その裏返しを考えてほしいと思います。

  

真に、美しく逞しい人間としての姿、その行為はどういうものか。

 

 

それを信じ、力強く、生き抜いて欲しいと願わずにはいられません。