己れに克つに、事々物々時に臨みて克つ様にては克ち得られぬなり。兼て気象を以て克ち居れよ、と也。
(自分に克つということは、その時その場の出来事に対処しようとして、いわゆる場当たりに「自分を律しよう」としたとして、なかなかそううまくいかぬものだ。常日頃から平常心をもって自分に克つ修行をしていなくては、できるものではない。そう(南洲翁は)言われた。)
<出典:「西郷南洲遺訓」桑畑正樹訳 致知出版社>
自分に克つ修行は常日頃から
眼前に現れる出来事にその都度対応しようとしても、
支離滅裂な判断や行動になってしまいます。
筋の通った判断、主張、意志、行動でないと、
人物としての重みは出ず、人からの信頼は得られません。
取るに足らない人物にはなりたくないものです。
仕事も同じで、場当たり的では成果が得られません。
「準備8割」、若い頃よく言われました。
実践すると確信が得られ、考え方や行動に変化が生じたことを思い出します。
指導してくれた先輩や先人に感謝する次第です。
ところで、自分に克つためには、どういう修行をすれば良いのか。
訳者は、「その都度、目の前の出来事に過敏に反応していては、
己に克つ、すなわち『自分本位に考えずに行動する』ことなどできない」
と補足解説されています。
察するに、あらゆる場面を想定し、
皆が良くなるための道筋を
常に考えておくということでしょうか。
そしてそれは、根底に利他の心を置き、
そこから生じる判断を拠り所とした意思決定を行い、
そして実行することになるのでしょう。
いざというとき、そのような対応ができれば、
人々のためになる状況を生み出せそうです。
「一番大きな障壁は、安逸を求める自分自身の心だ。
自分自身に打ち勝つことにより、障壁を克服し、
卓越した成果をあげることができる。」
<出典:「稲盛和夫一日一言」稲盛和夫著 致知出版社>
「人生は克己の二字にある。
これを実行するところに成功があり、
これを忘れるところに失敗がある。」
安田善次郎(安田財閥の創設者)
<出典:「致知日めくりカレンダー~心に響く先達の言葉~」致知出版社>
偉大なる事業家も、
「己に克つ」ことが良き人生を送るために必要な修行と捉えています。
周囲の皆が良くなるためのことを、1日ひとつでも考えて、
安逸を求める自分自身に打ち克つことで、
ただ漫然と過ごす無為な日々をなくしたいものです。