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COLUMNSブログ「論語と算盤」

相手を知る

2021年4月12日

のたまわく、ひとおのれらざるをうれえず、人を知らざるを患うるなり。

 (先師が言われた。人が自分を知ってくれなくても憂えないが、自分が人を知らないのを憂う。)

<出典:「仮名論語」伊與田覺著 致知出版社>

 (先生がいわれた。他人が自分を理解してくれないなどと気にせずに、自分が他人を理解していないのではないかと、気にかけなさい。)

<出典:「論語」吉田公平著 たちばな出版>

 

 他者のことを理解しようと思えば、そこには思いやりが生じます。他者のことを理解しようとせず、自分のことを気にかけてほしいと要求するだけなら、それは、わがままとなります。

特に、誰かにアドバイスや助言を行うとき、相手の心理や置かれた状況などを理解していなければ、相手の心にストンと入っていきません。そうでなければ、邪魔なアドバイスにさえなってしまいます。

 

 また昨今は、「承認欲求」などと言う現象・傾向も増えているようです。例えば、目上の人がいる場面では率先して良いことを行いますが(例えば、落ちているゴミを拾う)、誰も褒めてくれる人がいない場面では実践しないという傾向です。「自分が褒められること」が目的であり、世のため人のためという意識はありません。このような現象が増えてくれば、社会は成り立たなくなるでしょう。

 

 ところで、今日取り上げたこの言葉は、ビジネスにも通用します。「彼(かれ)を知り己(おのれ)を知れば百戦殆(あやう)からず」(孫子「謀攻編」)は有名な格言であり、戦のみならずビジネスの場面で良く用いられます。

成果を得るためには、相手のことを良く知ることが最も重要です。相手の現状を知らずにプレゼンテーションを行っても、うまく行きませんよね。マーケティングの神髄と言いたいくらいです。

 

 人間関係や仕事の面において、自分を理解してもらおうとするより、相手のことを理解した上で接触する方が、良い関係づくりや成果の獲得につながることを教えてくれています。

 

 もちろん、一朝一夕には相手を知ることはできません。相手を知るには、人間観察や経験が必要になります。それには、古典の知恵を学ぶことが極めて有効と思います。もちろん時間と努力は必要ですが。

日々意識して、豊かな人間性の形成につなげたいと思います。

 

 「五十六十花が咲き、七十八十実が成って、九十百歳熟れ盛り」

<出典:「平澤興一日一言」致知出版社>

かくありたいものです。