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有価証券報告書 財務分析
<電子部品業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのは京セラです。
2番手はTDK、続いてニデック、そして村田製作所です。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
ニデックの直近の営業CFは前年比151.0%の1,435億円です。
税引前当期利益は、前年から3割近く減少して1,206億円でしたが、棚卸資産の増加度合いの抑制や償却費の増加などによって、前年よりも増大しました。
一方、投資CFは前年比146.5%の1,649億円です。
有形固定資産の取得による支出が、前年の1,000億円弱から1,378億円にまで増えたことが主因です。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は215億円のマイナスとなりました。
TDKの直近の営業CFは前年比146.8%の2,628億円です。
当期利益は1割強減少して1,143億円となりましたが、償却費の増加に加え、営業債権や棚卸資産の増加度合いの抑制により、前年より増大しています。
一方、投資CFは前年比83.3%の2,344億円です。
固定資産の取得が前年より減少するなど、総じて投資を控えた様子です。
以上から、直前期のFCFは284億円のプラスとなりました。
京セラの直近の営業CFは前年比88.7%の1,792億円です。
当期利益は1割強減少して1,310億円となり、棚卸資産の増加や金融収益・費用による減少、負債の減少などもマイナスに働きました。
一方、投資CFは前年比212.5%の1,688億円です。
有形固定資産の購入による支出が前年より421億円ほど増加したのに加え、総じて支出面が増加して収入面が減少しています。
以上から、直前期のFCFは104億円のプラスとなりました。
村田製作所の直近の営業CFは前年比65.6%の2,763億円です。
当期利益は2割近く減少して2,534億円となり、さらに棚卸資産の増加、その他流動資産の増加、負債面の減少などがマイナスに働いています。
一方、投資CFは前年比74.4%の1,579億円です。
有形固定資産の取得は前年から400億円近く増えましたが、短期投資の減少、また前年大きかった「事業の取得」が無かったことなどから、全体として減少しました。
以上から、直前期のFCFは1,184億円のプラスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップは村田製作所です。
抜きんでたレベルですが、直近で3.5ポイントの低下と、やや大きく落としました。
なお、長期構想「Vision2030」の中の「中期方針2024」において、2025年度のROICの目標値として20%以上(税引前営業利益にて)を掲げています。
2番手はTDKです。
直近は1ポイント強低下しました。
続いて京セラです。
当社も前年から1ポイント強低下しています。
そしてニデックです。
直近は6ポイント強と、かなり大きく落としてしまいました。
なお、2025年度をターゲットとする中期戦略目標(Vision2025)におけるROIC目標として、15%以上を掲げています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのは村田製作所です。
ただしマイナス圏なので、実質的な経済的付加価値を生み出していない状態です。
ROICは良好な値ですが、WACCが相当に高くなっています。
β値が高いために株主資本コストが高くなっており、さらに調達資本中の株主資本が98%以上となっているためです。
負債を活用することでプラス圏に入ってくるでしょう。
2番手はTDKです。
やはりマイナス圏です。
β値は前社よりは低めで、かつ調達資本中の株主資本の割合が78%強です。
以上から、ROICのさらなる上昇が必要になるでしょう。
続いて京セラです。
当社もマイナス圏です。
β値が低く、WACC値も4社中最低であることから、問題はROICの低さといえます。
そしてニデックです。
かなり大きいレベルでのマイナス圏となっています。
β値が4社中最高値であり、調達資本中の株主資本の割合も80%を超えています。
また、ROICが低すぎる点も問題です。
今回、この業界で特に気になったのは
各社直近の指標が総じて良くなかった点です。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が
最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、電子部品業界を終了します。
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