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COLUMNSブログ「論語と算盤」

精密機器業界-6

2023年11月9日

業界売上高トップ4

有価証券報告書 財務分析

 

<精密機器業界・・・第6回>

~最終回~

 

 

6回分析テーマ・・・投資力    

分析指標値:営業CF対投資CF比率

        各社別の営業/投資CF推移

ROIC    

WACC  

 

(各指標の説明はこちら

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 最も100%に近いのはオリンパスです。

 

 次いでテルモです。

 

 続いてニコンです。

 

 そしてHOYAです。

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 オリンパス直近の営業CFは前年比58.0%の985億円です。

税引前利益は前年より400億円強増えましたが、営業債権と棚卸資産がそれぞれ270億円ほど増加しています。

営業CFを減少させた最大の要因は、法人所得税の支払額が前年の10倍以上の976億円になったことです。

 一方、投資CFは前年比82.3%の584億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は前年以上であり、減少した主因は、前年に計上された子会社の取得による支出218億円が、直近では40億円弱にまで縮小したためです。

 以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は401億円のプラスとなりました。

 

 

 

 テルモ直近の営業CFは前年比83.1%の1,175億円です。

税引前利益は16億円程度の増加となり、ほぼ横ばいでした。

ただし、棚卸資産で393億円、売上債権で85億円など、マイナス要因の増加が生じています。

 一方、投資CFは前年比75.4%の591億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出が前年を若干下回るなど、全体的に投資が抑制された格好です。

 以上から、直前期のFCFは584億円のプラスとなりました。

 

 

 

 HOYA直近の営業CFは前年比106.2%の2,018億円です。

税引前当期利益はほぼ前年並みであり、運転資本の増減、運転資本以外の増減などにおいても、おおむね前年並みのレベルにまとまっています。

 一方、投資CFは前年比162.1%の475億円です。

有形固定資産の取得による支出が335億円、子会社の取得による支出が48億円、定期預金の預入による支出が126億円と、それぞれ前年に比べると支出額が増加しています。

 以上から、直前期のFCFは1,543億円のプラスとなりました。

 

 

 

 ニコン直近の営業CFは前年比0.0%の15百万円です。

税引前利益は前年とほぼ同額の570億円であり、償却費と合わせると861億円ほどです。

マイナス要因は、売上債権の増加で155億円、棚卸資産の増加で288億円、前受金の減少額で448億円などとなっており、この3要因で税引前利益と償却費合計の861億円が完全に相殺されています。

 一方、投資CFは前年比291.3%の1,121億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は330億円と前年比で4割近く増加しており、さらに子会社又はその事業の取得による支出で769億円が計上されました。

 以上から、直前期のFCFは1,121億円のマイナスとなりました。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップHOYAです。

3期連続で上昇しており、4期間とも相当に高いレベルです。

 

 2番手はオリンパスです。

2期連続の上昇であり、充分に高いレベルです。

 

 続いてテルモです。

直近では低下しており、4期間を通じて低下傾向と認識できます。

なお、2021年12月に策定された5カ年計画において、ROIC10%以上を掲げています。

 

 そしてニコンです。

直近で上昇していますが、水準としては決して高くはなく、今後が期待されます。

 

 

WACC

〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 

 〔ROIC-WACC〕が最大なのはHOYAです。

調達資本のほとんどが株主資本となっているため、WACCはやや高めといえます。

しかしROICが極めて高く、両者の差が13ポイントと、めったに見ないほどのレベルになっています。

 

 2番手はオリンパスです。

WACCは4社中最低です。

有利子負債を活用しているため資本コストが押し下げられており、またROICも相当に良好なので、両者の差が高いレベルになっています。

 

 続いてテルモです。

両者の差がマイナスになっており、経済的価値を生み出せていないと言えます。

ROICは決して悪い水準ではありませんが、WACCが高くなっています。

調達資本中の株主資本が多く株主資本コストが相当高くなっています。

 

 そしてニコンです。

当社も両者の差がマイナスであり、経済的価値を生み出せていない状況です。

WACCが4社中最大になっていますが、この要因は株主資本コストのβ値の高さです。

 

 

この業界で気になった点です。

HOYAが圧倒的な強さを誇っており、これは当業界のみならず、一企業として優れた業績といえます。

オリンパスが、そのHOYAを追いかける形で伸びてきている状況です。

テルモは、売上高が増大している割には、低下傾向を示す指標が多めです。

ニコンは業績回復の途上とみられ、各種指標はまだ高まっていません。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が

最小となる会社から1~4位としています。

 

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

 

 

以上で、精密機器業界を終了します。

 

 

 

 

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