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有価証券報告書 財務分析
<精密機器業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのはオリンパスです。
次いでテルモです。
続いてニコンです。
そしてHOYAです。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
オリンパスの直近の営業CFは前年比58.0%の985億円です。
税引前利益は前年より400億円強増えましたが、営業債権と棚卸資産がそれぞれ270億円ほど増加しています。
営業CFを減少させた最大の要因は、法人所得税の支払額が前年の10倍以上の976億円になったことです。
一方、投資CFは前年比82.3%の584億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は前年以上であり、減少した主因は、前年に計上された子会社の取得による支出218億円が、直近では40億円弱にまで縮小したためです。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は401億円のプラスとなりました。
テルモの直近の営業CFは前年比83.1%の1,175億円です。
税引前利益は16億円程度の増加となり、ほぼ横ばいでした。
ただし、棚卸資産で393億円、売上債権で85億円など、マイナス要因の増加が生じています。
一方、投資CFは前年比75.4%の591億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出が前年を若干下回るなど、全体的に投資が抑制された格好です。
以上から、直前期のFCFは584億円のプラスとなりました。
HOYAの直近の営業CFは前年比106.2%の2,018億円です。
税引前当期利益はほぼ前年並みであり、運転資本の増減、運転資本以外の増減などにおいても、おおむね前年並みのレベルにまとまっています。
一方、投資CFは前年比162.1%の475億円です。
有形固定資産の取得による支出が335億円、子会社の取得による支出が48億円、定期預金の預入による支出が126億円と、それぞれ前年に比べると支出額が増加しています。
以上から、直前期のFCFは1,543億円のプラスとなりました。
ニコンの直近の営業CFは前年比0.0%の15百万円です。
税引前利益は前年とほぼ同額の570億円であり、償却費と合わせると861億円ほどです。
マイナス要因は、売上債権の増加で155億円、棚卸資産の増加で288億円、前受金の減少額で448億円などとなっており、この3要因で税引前利益と償却費合計の861億円が完全に相殺されています。
一方、投資CFは前年比291.3%の1,121億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出は330億円と前年比で4割近く増加しており、さらに子会社又はその事業の取得による支出で769億円が計上されました。
以上から、直前期のFCFは1,121億円のマイナスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはHOYAです。
3期連続で上昇しており、4期間とも相当に高いレベルです。
2番手はオリンパスです。
2期連続の上昇であり、充分に高いレベルです。
続いてテルモです。
直近では低下しており、4期間を通じて低下傾向と認識できます。
なお、2021年12月に策定された5カ年計画において、ROIC10%以上を掲げています。
そしてニコンです。
直近で上昇していますが、水準としては決して高くはなく、今後が期待されます。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはHOYAです。
調達資本のほとんどが株主資本となっているため、WACCはやや高めといえます。
しかしROICが極めて高く、両者の差が13ポイントと、めったに見ないほどのレベルになっています。
2番手はオリンパスです。
WACCは4社中最低です。
有利子負債を活用しているため資本コストが押し下げられており、またROICも相当に良好なので、両者の差が高いレベルになっています。
続いてテルモです。
両者の差がマイナスになっており、経済的価値を生み出せていないと言えます。
ROICは決して悪い水準ではありませんが、WACCが高くなっています。
調達資本中の株主資本が多く、株主資本コストが相当高くなっています。
そしてニコンです。
当社も両者の差がマイナスであり、経済的価値を生み出せていない状況です。
WACCが4社中最大になっていますが、この要因は株主資本コストのβ値の高さです。
この業界で気になった点です。
・HOYAが圧倒的な強さを誇っており、これは当業界のみならず、一企業として優れた業績といえます。
・オリンパスが、そのHOYAを追いかける形で伸びてきている状況です。
・テルモは、売上高が増大している割には、低下傾向を示す指標が多めです。
・ニコンは業績回復の途上とみられ、各種指標はまだ高まっていません。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が
最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上で、精密機器業界を終了します。
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