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COLUMNSブログ「論語と算盤」

自動車業界-6

2023年9月7日

業界売上高トップ4

有価証券報告書 財務分析

<自動車業界・・・第6回>

~最終回~

 

 

6回分析テーマ・・・投資力

分析指標値        

  :営業CF対投資CF比率

     各社別の営業/投資CF推移

ROIC    

WACC     

 

(各指標の説明はこちら

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 最も100%に近いのはスズキです。

4社の中では安定した推移となっています。

 

 2番手はトヨタです。

上下動が大きくなっています。

 

 続いて日産です。

 

 そしてホンダです。

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 トヨタ直近の営業CFは前年比79.4%の2兆9,551億円です。

当期利益が前年から4千億円近く減少しており、棚卸資産や営業債権など各種債権の増加もキャッシュ・マイナスに働きました。

 一方、投資CFは前年比276.9%の1兆5,989億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出は、前年より2,500億円強増え、賃貸資産や公社債等の購入は減少しましたが、直前期は公社債の満期償還が1兆円近く減少し、さらに定期預金の取り崩し等による収入も前年を大きく下回りました。

 以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は1兆3,562億円のプラスとなりました。

 

 

 

 ホンダ直近の営業CFは前年比126.8%の2兆1,290億円です。

税引前利益は前年から1,900億円近く減少しましたが、営業債権やオペレーティング・リース資産が減少したことにより、営業CFが拡大しています。

 一方、投資CFは前年比180.3%の6,781億円です。

有形/無形固定資産の取得による支出が、前年より2,000億円近く増加していることが主因です。

 以上から、直前期のFCFは1兆4,510億円のプラスとなりました。

 

 

 

 日産直近の営業CFは前年比144.1%の1兆2,211億円です。

税金等調整前当期純利益は、前年より180億円近く増えており、さらに仕入債務が5,400億円強増加したことも大きく影響しています。

 一方、投資CFは前年比304.5%の4,470億円です。

固定資産の取得による支出は、前年より若干増加しました。

直前期では、前年度に大きかった「投資有価証券の売却による収入」や「拘束性預金の減額」などについて、少額あるいはマイナスになったことが、投資CFの拡大に影響しています。

 以上から、直前期のFCFは7,740億円のプラスとなりました。

 

 

 

 スズキ直近の営業CFは前年比129.5%の2,866億円です。

税金等調整前当期純利益は、前年より1,000億円強増加しています。

売上債権と棚卸資産が1,680億円強増えています(キャッシュ・マイナス)が、他の要因のマイナス度合いが抑制されました。

 一方、投資CFは前年比197.2%の3,027億円です。

増加した主因は、有形固定資産の取得による支出が前年より680億円近く増加したことです。

 以上から、直前期のFCFは160億円のマイナスとなりました。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップスズキです。

直前期はかなり高くなっており、他業種と比較しても良好なレベルと言えます。

 

 2番手はホンダです。

3期連続で、約0.3ポイントずつ上昇しています。

 

 続いてトヨタです。

上下動がありますが、総じて低下傾向に映ります。

 

 そして日産です。

過去2期連続のマイナスから、直近2期連続のプラス領域での伸長となっています。

 

 

WACC

〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 

 〔ROIC-WACC〕が最大なのはスズキです。

ただし、マイナス値であり、4社とも経済的価値を生み出しているとは言えない状況にあります。

当社の場合、ROICが相当良好であるにもかかわらず、コストの高い株主資本の割合が8割近くとなっています。

低コストの負債での調達が望まれる状況と言えます。

 

 2番手はトヨタです。

ROICは高くありませんでしたが、WACCが抑制されています。

株主資本コストはスズキの半分程度となっており、さらに株主資本の割合を6割弱にまで下げています。

 

 続いてホンダです。

株主資本の割合は50%強というレベルで、特に問題は感じられません。

要するに、ROICが低すぎると言えます。

 

 そして日産です。

株主資本コストは4社中で最大ですが、その割合は3割以下となっており、7割強を低コストの負債による調達としています。

それでもマイナス圏なので、やはり当社もROICが低すぎると言えます。

 

 

今回の「投資力」の順位による

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が

 最小となる会社から1~4位としています。

 

 

また、全6回の分析における順位の

比較レーダーチャートは以下のとおりです。

 

 

 

以上で、自動車業界を終了します。

 

 

 

 

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