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有価証券報告書 財務分析
<タイヤ業界・・・第6回>
~最終回~
第6回分析テーマ・・・投資力
分析指標値:
営業CF対投資CF比率
各社別の営業/投資CF推移
ROIC
WACC
(各指標の説明はこちら)
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も100%に近いのはTOYO TIREです。
4期を通じて100%近辺での安定した推移になっています。
2番手は横浜ゴムです。
2021決算期は比率が大きすぎて、グラフ枠から逸脱しています。
続いてブリヂストンです。
そして住友ゴムです。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
ブリヂストンの直近の営業CFは前年比95.4%の2,685億円です。
税引前当期利益は前年を10%強上回っていますが、「営業債権その他の債権」の増加、「棚卸資産」の増加を主因として、昨年を下回りました。
一方、直近の投資CFは4期間で最高額の3,380億円となっています。
有形/無形固定資産の取得による支出が前年を大きく上回っています。
以上から、直前期のFCF(フリー・キャッシュフロー)は695億円のマイナスとなりました。
住友ゴムの直近の営業CFは前年比44.2%の279億円です。
税引前利益が前年の半分近くまで縮小しており、また「棚卸資産」の増加等も影響しています。
一方、投資CFは前年比145.7%の787億円です。
有形/無形固定資産の取得による支出が前年を大きく上回ったことが主因です。
以上から、直前期のFCFは508億円のマイナスとなりました。
横浜ゴムの直近の営業CFは前年比57.4%の392億円です。
税引前利益は前年の84%程度となり、「売上債権」の増加や「棚卸資産」の増加等が見られます。
一方、直近の投資CFは4期間で最高額の464億円です。
特に、「有形固定資産の取得による支出」が大きく拡大したことが要因です。
以上から、直前期のFCFは71億円のマイナスとなりました。
なお、中期経営計画(最終年度=2023年)において、営業CF=2,500億円(2021~2023年の3カ年合計として)を掲げています。
TOYO TIREの直近の営業CFは前年比44.0%の152億円です。
税金等調整前当期純利益は前年の116%強と良好でしたが、「売上債権」と「棚卸資産」、そして「法人税の支払額」の増加などマイナス要因が多くなっています。
一方、投資CFも前年比44.5%の167億円と、前年より小さくなっています。
営業CFと投資CFのバランスが取れているとも見受けられます。
有形/無形固定資産の取得による支出がともに増大しましたが、「投資有価証券の売却及び償還による収入」が大きく、他にも「有形固定資産の売却による収入」なども計上されています。
以上から、直前期のFCFは15億円のマイナスとなりました。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップはブリヂストンです。
2020期を除いて10%近辺であり、良好な状態といえます。
中期事業計画において、ROIC=10%レベルを目標として掲げています。
2番手はTOYO TIREです。
2020期の9.8%という高いレベルから2期連続で低下しており、特に直近の低下度合いが大きくなっています。
続いて横浜ゴムです。
2021期の8.3%に対して、直前期は比較的大きく低下しました。
なお、中期経営計画(最終年度=2023年)において、ROIC=7%を掲げています。
そして住友ゴムです。
5%に満たない推移であり、直前期のレベルはかなり低くなっています。
なお、中期計画(最終年度=2027年)として、ROIC=6%を掲げています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
〔ROIC-WACC〕が最大なのはブリヂストンです。
調達資本の9割以上が有利子負債であることから、株主資本コストが高くなっています。
そのため、WACCも高いレベルになっていますが、ROICがそれ以上に高いために良好な状態となっています。
2番手はTOYO TIREです。
ただし、マイナス圏であり、経済的価値を生み出していないと言えます。
調達資本の7割近くが株主資本であり、β値の高さから株主資本コストが大きくなっています。
特に、直前期でROICが急落した点が残念といえます。
続く横浜ゴムもマイナス圏です。
当社も調達資本の7割近くが株主資本であることが、結果的にWACCを高めている状況です。
そして住友ゴムもマイナス圏です。
WACCは4社中で最も低いのですが、それ以上にROICが低すぎます。
今回の「投資力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
※営業CF対投資CF比率の順位は、100%との乖離幅が最小となる会社から1~4位としています。
また、全6回の分析における順位の
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
以上でタイヤ業界を終了します。
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