自動車業界の4回目です。
今回は、「資本活用力」の分析です。
取り上げる指標は、総資本回転率、売上債権回収日数、
棚卸資産回転日数、流動比率、自己資本比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【総資本回転率】
〔総資本回転率=売上高÷総資本〕
トップはスズキです。
2021期は、短期借入金が前年の2倍以上になるなど短期の有利子負債が膨らんだせいで総資本が高まり、この指標は大きく低下しました。
しかし直前期は、総資本の伸び率以上に売上高が伸びたことから上昇しています。
2番手はホンダです。
2020期と2021期は総資本の拡大は大きくないものの、売上高の低迷により低下しました。
直前期では、総資本の伸び率よりも売上高の伸び率がわずかに勝りました。
続いて、日産です。
総資本は3期連続で減少しています。
2020期と2021期は、総資本の減少率よりも売上高の減少率が大きかったのですが、直前期は売上高が久しぶりに前年よりも拡大したため上昇しました。
最後にトヨタです。
推移は他の3社と同様です。
総資本は3期連続で増大しており、売上高は2期連続で減少した後、直前期で増大しました。
【売上債権回収日数】
〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕
最短なのはスズキです。
2021期はやや長期化したものの、直前期では40日台の半ばまで戻しました。
2番手はホンダです。
当社も2021期では伸びましたが、直前期で戻しています。
続いてトヨタです。
4か月程度となっており、営業債権の中心は自動車事業によるもの、つまりは自動車ローンの未回収分です。
最も長期になっているのは日産です。
自動車ローンが中心のようですが、かなりの時間がかかっています。
直前期は300日弱と、年商規模に近づいています。
通常で考えるならば、相当に資金繰りが厳しいであろうと想定されます。
【棚卸資産回転日数】
〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕
最短なのはスズキです。
他の3社が総じて長期化傾向にある中、当社のみ直前期で短縮化しています。
貸借対照表をみると、仕掛品や原材料などは増加しており、やはりサプライチェーンの断絶リスクをカバーしようとしている様子です。
その一方で商品及び製品勘定は減少しており、その分身軽になっています。
2番手はトヨタです。
直前期の棚卸資産を見ると、やはり仕掛品が前年比1.5倍以上、原材料が1.7倍以上と増えています。
商品及び製品も1.15倍と増加していますが、図ったように売上高伸長率と一致しています。
続いてホンダです。
3期連続の伸長です。
上記2社と同様に伸び率を算出すると、仕掛品が前年比126.5%、原材料が133.5%と増加しています。
製品勘定は115.7%と、売上高伸び率の110.5%よりは増加度合いが大きくなっています。
最後は日産です。
他社同様に上昇傾向です。
仕掛品が前年比で126.9%の増加、原材料及び貯蔵品が149.1%の増加、その一方商品及び製品は99.7%と、売上高の増加に反して減少しています。
【流動比率】
〔流動比率=流動資産÷流動負債〕
トップは日産です。
直前2期において連続で上昇しています。
流動資産と流動負債ともに減少していますが、流動負債の方の減少割合が大きくなっています。
2番手はスズキです。
3期連続で、流動負債の減少率が流動資産の減少率を超えています。
その中で、特に直前期は、短期の有利子負債を前年比33.5%と大きく減少させたため急上昇しました。
続いて、ホンダです。
3期連続で、流動負債の増加率が流動負債を超えており、上昇しています。
グラフの形状からも、かなり安定的な推移と映ります。
最後はトヨタです。
指標値は4位となりますが、目的をもってコントロールしていると見た方が正しいのでしょう。
100数パーセントのレベルを意図的に維持していると目されます。
【自己資本比率】
〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕
トップはスズキです。
40%をやや超えるレベルを維持しています。
2番手はホンダです。
40%前後で推移しています。
続いてトヨタです。
他の3社に比して変動が少なくなっており、30%台の後半がターゲットレベルであろうと想定されます。
最後は日産です。
2期連続で純資産の減少が続いていましたが、直前期では増加しました。
今回、特に気になったのは、
まず、スズキの資本効率の良さです。
そして、トヨタの安定感です。
資本が巨大であるが故、
効率よりも安定運用を図っている様子です。
今回の「資本活用力」の順位による
比較レーダーチャートは以下のとおりです。
今回は以上です。
次回は、「資金力」を見ていきましょう。
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