建設業界の6回目、最終回です。
今回は、「投資力」の分析です。
取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率、
各社別の営業/投資CF推移、ROIC、WACCとなります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【営業CF対投資CF比率】
〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕
最も高い比率が大成建設です。
2期連続で上昇した後、直前期は低下しました。
2番目に高い比率は大林組です。
2021期に大きく低下した後、直前期は上昇しています。
続いて清水建設です。
直近の2期は、投資CFが営業CFよりも多くなっています。
そして鹿島建設です。
年度で交互に上下しています。
続いて各社の推移を見ていきます。
【各社別 営業/投資CF推移】
〔実額ベース〕
鹿島建設の営業CFは、2021期で急増していますが、これは売上債権が大幅に減少した影響です。
一方、投資CFは2020期に大きく膨らみました。
この内容は、有形固定資産の取得による支出が主因です。
投資CF全体の約8割、812億円ほどになっており、特に土地と建設仮勘定が増えています。
直近2期の投資CFは減少していますが、有形固定資産の取得による支出はほぼ横ばいで推移しています。
大林組の営業CFは2020期で拡大していますが、これは当期純利益の拡大と売上債権の減少が主たる要因です。
一方、投資CFは概ね横ばいです。
2021期のみ拡大しており、その内容は有形/無形固定資産の取得による支出が前年より約100億円、子会社株式の取得による支出が約67億円、その他が約180億円の増加となっています。
大成建設の投資CFには、年度ごとに変化が見られます。
まず2019期は、有形/無形固定資産の取得による支出が約466億円と前年の5倍ほど、投資有価証券の取得による支出が174億円と前年の3倍近くとなっており、両者で投資CF全体の8割近くを占めています。
2020期は一転、前年増やした定期預金の取り崩し、同じく前年取得した有形/無形固定資産の売却による収入、同じく投資有価証券の売却及び償還による収入などにより、投資CFがプラスになりました。
2021期は有形/無形固定資産の取得による支出が約127億円、投資有価証券の取得による支出が約121億円とやや控え気味となり、直前期の2022期は、投資有価証券の取得による支出が約259億円と増えた以外、目立った変化はないという状況です。
清水建設は、2020期に投資CFを拡大させたのち、2期連続で減少しています。
2020期の投資CFの拡大要因は、有形固定資産の取得による支出が、前年の約306億円から約1,239億円へと急増したためです。
内容は、建物構築物が約722億円、機械運搬具及び工具器具備品が約64億円、土地が約420億円の増加というものです。
2021期および直前期の2022期においても、支出額は多少減少したものの、上記明細は継続して増加しています。
【ROIC】
〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕
トップは大成建設です。
ただし、2期連続で低下しています。
純資産は3期連続の増加、有利子負債は2期連続で微増しているという状況です。
2番手は鹿島建設です。
3期連続で低下していますが、低下幅を抑制しています。
純資産も有利子負債も増えていますが、営業利益を維持しています。
続いて大林組です。
2期連続の低下であり、直前期は5ポイント以上の急落となりました。
営業利益が大きく減少したことが響いています。
なお、中期経営計画2022では目標ROICを5%以上としています。
最後は清水建設です。
3期連続の低下となっており、直前期は約3.5ポイントの低下です。
直前2期の営業利益の減少が影響しています。
【WACC】
〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))
+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕
直前期の業績悪化により、
4社ともWACCがROICを上回ってしまいました。
そのような中、最もマイナス幅が小さいのが大成建設です。
WACCは決して低くありませんが、ROICを維持したことが奏功しています。
2番手は鹿島建設です。
WACCは4社中最高値ながらも、ROICが維持されています。
続いて清水建設です。
WACCが最小値です。
そのためROICが4社中最低でも、3位となりました。
最後は大林組です。
WACCは高い方ではありません。
よって、ROICの増大が求められます。
今回、この業界で特に気になったのは、鹿島建設と大成建設です。
利益率は鹿島建設の独壇場ですが、大成建設は資金力に強さが感じられます。
以上で、建設業界(2022)を終了します。
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