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COLUMNSブログ「論語と算盤」

タイヤ業界-6

2022年6月30日

タイヤ業界の6回目最終回です。

 

今回は、「投資力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、営業CF対投資CF比率

各社別の営業/投資CF推移ROICWACCとなります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

営業CF対投資CF比率

〔営業CF対投資CF比率=営業CF÷投資CF〕

 

 横浜ゴムトップです。

直前期は1500%を超えており、グラフに収めていません。

 

 2番手は住友ゴム工業です。

4期とも営業CF以下の投資CFとなっています。

 

 続いてブリヂストンです。

2021期は投資CFがプラスになったため暫定的に比率を100%としています。

 

 最後はTOYO TIREです。

4期中の3期において、営業CF以上の投資CFとなっています。

 

続いて各社の推移を見ていきます。

 

 

各社別 営業/投資CF推移

〔実額ベース〕

 

 ブリヂストンFCF(フリー・キャッシュフロー)が高まり続けています。

2020期の営業CFは、当期利益が大きく減少したものの、高いレベルの償却費に加え営業債権と棚卸資産の減少により前年以上となりました。

それに対して2021期では、非継続事業の売却に伴うマイナスを筆頭に、営業債権と棚卸資産の増加等により減少しました。

一方、投資CFは、直前期でプラスになりました。

これは、様々な非継続事業の売却や取得を行っている中、非継続事業の売却による収入が3,638億円と大きかったことが主因です。

 

 

 

 住友ゴム工業は、前述のように、4期間とも営業CF以下の投資CFという推移です。

2020期の営業CFは、当期利益が減少したものの、一定の償却費および営業債権と棚卸資産の減少などが奏功し、前年を大きく上回りました。

ところが2021期は、当期利益があまり伸びなかったことに加え棚卸資産が大きく増加したこともあり、概ね半減となりました。

なお、投資CF有形固定資産の取得による支出が最大の項目となっています。

 

 

 

 横浜ゴム営業CF以内の投資CFとなっています。

2020期の営業CFは、当期利益の落ち込みに対して売上債権と棚卸資産の削減が奏功し、前年を上回りました。

ただし翌2021期においては、当期利益が2倍以上になったものの、棚卸資産が大きく増大したことに加え売上債権の増加等もあったことから減少してしまいました。

2021期の投資CFは、有形固定資産の取得による支出が前年より増していますが、有形固定資産の売却による収入や非継続事業の売却による収入が大きく計上され、結果として支出が抑制された格好です。

 

 

 

 TOYO TIREは、FCFがマイナスになっているように、積極的な投資姿勢と捉えられます。

2020期の営業CF4期間中で最高額となっています。

これは、当期利益が減少したものの一定の償却費と棚卸資産の減少が主要因です。

2021期は、当期利益が前年の3倍以上となりましたが、棚卸資産の増大が当期利益の増大額を打ち消すレベルになっていることや売上債権の増大などによって減少してしまいました。

2021期の投資CFは、有形/無形固定資産の取得が前年より大きく拡大しています。

 

 

ROIC

〔ROIC=(営業利益−法人税等)÷(純資産+有利子負債)〕

 

 トップはブリヂストンです。

2020期では、売上高の減少に伴う営業利益額の極小化により大きく低下しましたが、直前期では完全に復元し、4期中最高値となっています。

なお、中期事業計画における2023年度のROICの目標値は10%とのことです。

 

 2番手はTOYO TIREです。

直前期は前年より低下しており、2018期と比較しても低下傾向と映ります。

営業利益は大きく増えましたが、分母となる有利子負債と純資産の合計額も拡大しています。

 

 続いて横浜ゴムです。

2021期は4期中の最高値となっています。

分母である純資産が大きく拡大しましたが、営業利益が前年の2倍以上になったことが要因です。

なお、中期経営計画における2023年度までのROIC目標値を7%としています。

 

 最後は住友ゴム工業です。

4社の中では低位ですが、安定しています。

2021期の営業利益は前年比で1.2倍強ですが、純資産が比較的大きく増えており、有利子負債も若干増大しています。

 

 

WACC

  〔WACC=株主資本コスト×(株主資本÷(株主資本+有利子負債))

+負債コスト(1-実効税率)×(有利子負債÷(株主資本+有利子負債))〕

 

 トップはブリヂストンです。

4社の中では、ROICが最大かつWACCが最小となっており、投下経営資本によるリターンが極めて良好と言えます。

 

 2番手はTOYO TIREです。

WACCの値は4社中最大ですが、ROICの値はそれ以上という力強さが感じられます

 

 続いて横浜ゴムです。

4期中最大となった直前期のROICを今後も継続できるかがカギになるでしょう。

 

 最後は住友ゴム工業です。

4社中唯一のマイナス値です。

WACCが4社中最低と抑制されていますので、今後はROICの拡大が望まれます。

 

 

以上で、タイヤ業界を終了します。

 

 

 

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