Loading

COLUMNSブログ「論語と算盤」

タイヤ業界-5

2022年6月27日

タイヤ業界の5回目です。

 

今回は、「資金力」の分析です。

 

 

取り上げる指標は、手元資金推移手元流動性比率

手元資金有利子負債カバー率総資本営業CF比率売上高営業CF比率となります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

手元資金推移

〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕

 

 ブリヂストン圧倒的な規模です。

特に2020期の増大レベルが大きくなっています。

これは、手元資金を除く流動資産の圧縮および負債の増加によるものです。

2020期は、売上高が大きく減少する中、棚卸資産1,300億円の圧縮をはじめ、営業債権やその他金融資産などで合計2,380億円ほどを圧縮しています。

他方、長期と短期の社債や借入金で1,650億円ほど調達しています。

以上の要因から手元資金が増大しましたが、かなりドラスティックな動きです。

強力なマネジメント体制のなせる技と言っても差し支えないでしょう。

コロナ禍における手元資金の確保策と思われますが、今後もこのレベルを維持していくのかもしれません。

 

 2番手住友ゴム工業です。

2019期に少し減少しましたが、概ね750億円程度で推移しています。

 

 続いてTOYO TIREです。

直前期で増大しています。

調達面から見ると、直前期の最終利益拡大によって純資産が増しており、負債では短期のCPや長期の社債も増加しています。

運用面では、固定資産より流動資産の増加額が大きく、手元資金のみならず、棚卸資産等も膨らんでいます。

 

 最後は横浜ゴムです。

やはり直前期で増加していますが、中心的要因は当期純利益の拡大による資本合計の増大です。

運用面では、手元資金を含めた流動資産が、非流動資産以上の増加額となっています。

 

 

手元流動性比率

〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕

 

 日商レベルで見ても、ブリヂストン最大となります。

上述のように、2020期の手元資金は前年比でほぼ倍増しており、直前期でも90日分つまり3ヶ月分程度の手元資金レベルです。

不測の事態に備えるための新たな資金確保水準かもしれません。

 

 2番手TOYO TIREです。

直近の2期連続で増加しています。

さらに積み増していく可能性も感じられます。

 

 続いて住友ゴム工業です。

1ヶ月分を下回るレベルです。

平常時を想定しても、製造業という観点からはやや少なめと感じます。

もっとも、グループ間などでの資金調達体制が完備されているのかもしれません。

 

 最後は横浜ゴムです。

20182019期は2週間強程度、直近2期で3週間程度と、こちらも少なめと感じます。

速やかに機能する資金調達面の手当てがあるのかもしれません。

 

 

手元資金有利子負債カバー率

〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕

 

 ブリヂストントップです。

2019期を除いて100%を超えており、実質無借金経営の状態です。

手元資金の厚さに加え、経営基盤が相当に強固であると感じます。

 

 TOYO TIRE2番手です。

直近2期で比率を上昇させています。

直前期では有利子負債が増えましたが、手元資金の増大度合いの方が大きくなっています。

 

 住友ゴム工業が続きます。

4社中唯一、直前期で低下しています。

 

 最後は横浜ゴムです。

直前期は、手元資金の増加および有利子負債の減少によって上昇しました。

 

 

総資本営業CF比率

〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕

 

 トップ横浜ゴムです。

他の3社が大きく変動する中、比較的安定的に推移しています。

直前期は、総資本の増加と営業CFの減少で低下し、4期中で最低水準になりました。

なお、中期経営計画の20212023年度における累計の営業CFについて、その目標額を2,500億円としています。

2021期が683億円だったので、2022期と2023期の2ヵ年で1,800億円強の創出が必要です。

 

 TOYO TIRE2番手です。

4社中最も乱高下しています。

2020期は、総資本が減少し、営業CFが前年の5倍近くまで膨らんだため急上昇しました。

ただし直前期は反転し、総資本の増加と営業CFの減少により低下しています。

 

 続いてブリヂストンです。

直前期の営業CFは2,815億円と、前年比で4割以上減少してしまいました。

この要因は、当期利益面が良好であった一方、非継続事業の売却、法人所得税の支払額、棚卸資産の増加額、その他多様な項目のマイナスによるものです。

結果、直前期の値は4期中最低となっています。

 

 最後は住友ゴム工業です。

2020期の上昇は、総資本の減少に対して営業CFが前年比で35%アップしたためです。

2021期が減少したのは、総資本の増大に加え、営業CFが概ね半減したためです。

 

 

売上高営業CF比率

〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕

 

 4社の順位およびグラフの推移は上述の総資本営業CFとほぼ同様となっています。

 

 

今回、特に気になったのは、

手元資金の確保量に関する各社の取り組みの相違です。

 

ブリヂストンTOYO TIREは確保量拡大の動きが見えますが、

住友ゴム工業横浜ゴムはそれほどでもないようです。

 

今回は以上です。

次回は、「投資力」を見ていきましょう。

 

 

※当サイトの「注意・免責事項」ご確認ください。