ビール業界の5回目です。
今回は、「資金力」の分析です。
取り上げる指標は、手元資金推移、手元流動性比率、
手元資金有利子負債カバー率、総資本営業CF比率、売上高営業CF比率となります。
なお、各指標についての説明はこちらです。
【手元資金推移】
〔手元資金=現金預金+有価証券(短期保有目的)〕
トップはサントリーです。
直近では、2番との差が2倍程度になっています。
売上高の差はそんなに離れていないので、潤沢な資金力と映ります。
2番手はキリンです。
安定していますが、3期連続で減少しています。
続いてアサヒGです。
微減傾向でしたが、直前期では4社中で唯一、拡大させています。
最後はサッポロです。
拡大基調でしたが、直前期ではやや下げました。
【手元流動性比率】
〔手元流動性比率=(現金・預金+有価証券)÷(年商÷365)〕
トップはサントリーです。
直前期では、日商で47.5日、月商でいうと1.5ヶ月分程度となっています。
日商ベースで見ると、それほど大きなレベルでないことがわかります。
2番手はキリンです。
4期間とも30日程度であり、大きな変動はありません。
3番手はサッポロです。
直前期では微減していますが、2018.12期からすると拡大傾向です。
ただし、日商で15日程度というのは、やや少なく感じます。
最後がアサヒGです。
この4期間、10日分を下回って推移しています。
前回、売上債権と棚卸資産の縮小を取り上げましたが、手元資金の拡大にはつながっていないようです。
【手元資金有利子負債カバー率】
〔手元資金有利子負債カバー率=(現金・預金+有価証券)÷有利子負債〕
トップはキリンです。
ただし、2018.12期からは大きく低下してきています。
良いか悪いかは別として、上場企業で増加している実質無借金経営の状態(100%以上)には、かなりの差があります。
2番手はサントリーです。
2期連続で上昇し、トップに肉薄しましたが、直前期ではやや低下しました。
続いてサッポロです。
3期連続で上昇しています。
決して高くないレベルですが、上昇傾向は好ましいと言えるでしょう。
最後はアサヒGです。
2期連続で下げ、直前期は盛り返しましたが、それでもかなり低い値です。
【総資本営業CF比率】
〔総資本営業CF比率=営業CF÷総資本〕
トップはキリンです。
直前期では、当期利益と減価償却費によって営業CFを生み出しています。
一方、前回見たように、売上債権と棚卸資産の増加がマイナスに働いています。
2番手はアサヒGです。
2020.12期で下げたのは、何度も記載していますが、CUB事業の買収による総資本の拡大のせいです。
営業CF自体は前年より増大しています。
続いてサントリーです。
2019.12期と2020.12期における総資本はほとんど変わっていません。
その中で、2020.12期にこれだけ比率が低下したのは、ひとえに営業CFの減少です。
2019.12期から900億円ほど減少しています。
連結キャッシュフロー計算書から見て取れる主要因は、「営業債務及びその他の債務」の減少と認識されます。
最後はサッポロです。
直前期では大きく盛り返しています。
当社も2020.12期に大きく低下していますが、この要因は最終欠損です。
【売上高営業CF比率】
〔売上高営業CF比率=営業CF÷売上高〕
トップはアサヒGです。
3期連続で上昇しています。
上昇の要因として、当期利益と減価償却費の大きさがあげられますが、前回の売上債権回収期間の短縮化も貢献しています。
これほどキャッシュを生み出しているのに、上述した手元資金が多くないことに疑問が生じるかもしれません。
その理由は、例えば直前期では、CUB事業買収に伴って調達した借入金や社債の返済が大きくなっているためです。
2番手はサントリーです。
4期間の推移は、総資本営業CFの内容と同様と捉えられます。
続いてキリンです。
この4期間では最高値となっています。
最後はサッポロです。
4期間の推移は、総資本営業CFの内容と同様と捉えられます。
今回、特に気になったのは、
キリンの手元資金の強さ、
そしてアサヒGの営業CF創出力の強さでした。
今回は以上です。
次回は、「投資力」を見ていきましょう。
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