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COLUMNSブログ「論語と算盤」

ビール業界-4

2022年6月2日

ビール業界の4回目です。

 

今回は、「資本活用力」の分析です。

 

取り上げる指標は、総資本回転率売上債権回収日数

棚卸資産回転日数流動比率自己資本比率となります。

 

なお、各指標についての説明はこちらです。

 

 

総資本回転率

〔総資本回転率=売上高÷総資本〕

 

新型コロナの感染拡大の影響で、

4社とも2020.12期に低下し、2021.12期も過去に比べると低くなっています。

 

 キリンがトップです。

ただし、3期連続で低下しています。

総資本が3期連続で拡大する中、売上高は2期連続で低下しました。

 

 2番手は、トップと僅差のサッポロです。

直前期で上昇させており、高めのレベルを維持しています。

総資本は3期連続の低下売上高は2期連続で総資本の低下率以上に低下しましたが、直前期では増加しました。

 

 続いてアサヒGです。

2020.12期では、第1回で述べたCUB事業の買収による総資本の増加があったため急落しています。

ただし直前期においては、4社中トップの売上高上昇率であり、総資本の拡大も平準化しました。

 

 最後にサントリーです。

もともと4社中では低いレベルに位置していました。

総資本は3期連続で増加しており、売上高の増加度合い以上となっています。

 

 

売上債権回収日数

〔売上債権回収日数=売上債権残高÷日商(売上高÷365)〕

 

売上債権額は、4社とも「営業債権その他の債権」の値を用いています。

 

 最短なのはアサヒGです。

3期連続で短縮化させており、4社の中では、債権回収効率の良さで群を抜いています。

キャッシュフローの創出につながってきます。

 

 2番手はサントリーです。

ただし、2期連続で急上昇しており、来期以降がどうなるかも気になります。

直近の2期は、売上高伸長率以上の売上債権伸長率となっています。

 

 続いて僅差でサッポロです。

こちらも急上昇と言えます。

やはり、直近2期ともに、売上高伸長率以上の売上債権伸長率です。

 

 最も長期になっているのがキリンです。

直前期のみ、売上債権の伸長率が急上昇しています。

 

なお、4社の差は10日強程度なので、

それほど大きな違いとは言えません。

 

 

棚卸資産回転日数

〔棚卸資産回転日数=棚卸資産残高÷日商(売上高÷365)〕

 

 最短はサッポロであり、約1ヵ月分の在庫保持という状況です。

4期とも、4社中最短であり、在庫が絞り込まれている感があります。

ただし、直近2期は、売上高伸長率以上の棚卸資産伸長率になっています。

 

 2番手は、僅差でアサヒGです。

2019.12期と2020.12期の棚卸資産の前年比は、売上高伸長率以上になっていました。

しかし直前期は逆転しており、当指標もわずかですが短縮化しています。

 

 続いてキリンです。

1.5ヵ月分強の在庫保持という状態です。

3期連続で売上高伸長率を超える棚卸資産の伸長率となっており、長期化傾向にあります。

 

 最後はサントリーです。

こちらも3期連続で長期化しており、直前期では3ヶ月分近くのレベルと、1社だけ突出した形になっています。

 

 

流動比率

〔流動比率=流動資産÷流動負債〕

 

 キリンがトップです。

4期とも100%超であり、多少の上下動はあるものの安定的です。

 

 2番手はサントリーです。

こちらも安全圏内で推移している格好です。

 

 続いてサッポロです。

流動負債には、不動産事業にまつわる「その他の金融負債」が多めになっています。

 

 最後はアサヒGです。

直近2期はかなり低下しました。

2020.12期は、社債及び借入金(短期)が前期比で倍増しており、CUB事業買収に必要な有利子負債の拡大と思われます。

2021.12期において上記有利子負債は2019.12期レベルまで縮小しましたが、今度は売上高拡大に伴う各種の負債が増加したため、まだ低いレベルに位置しているという状況です。

 

 

自己資本比率

〔自己資本比率=自己資本÷総資本〕

 

 

 アサヒGがトップです。

4社の中ではもともと高いレベルにあり、CUBの買収時には5.5ポイントほど低下したものの、直前期では元のレベルまで復元しています。

 

 2番手は、サッポロです。

24%台と27%台を行ったり来たりの状況です。

当期利益の増減による自己資本の変動がダイレクトに表れている格好です。

 

 続いて、キリンです。

2020.12期は、前回記載したように、自社株買いによる自己資本の減少に加え、有利子負債がこの4期間のうちで最大になった影響です。

 

 最後にサントリーです。

4社の中では最も低いレベルに位置していましたが、3期連続で上昇させています。

特に直前期では、円安による在外営業活動体の換算差額が増加することにより、自己資本が2,000億円近く拡大したことが大きく影響しています。

 

 

今回、特に気になったのは、

サントリー以外の3社が上位を占めたことです。

 

資本活用力という側面からは、長年の底力が垣間見られます

 

 

今回は以上です。

次回は、「資金力」を見ていきましょう。

 

 

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